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あるところに、ゆっくり霊夢の家族がいた。 親ゆっくり霊夢に赤れいむ3匹、そして赤まりさ3匹。 もう片方の親であるゆっくり魔理沙は、まりさ種らしくもなく家族が野犬に襲われた際に囮となった。 巣に逃げ帰った親れいむは親まりさの帰りを待ち続けたが、結局帰ってくることはなかった。 そして残された、パートナーとの愛の結晶である6匹の赤ゆっくり。 れいむは全ての愛情を注ぎ込んだ。忙しい毎日だったが、赤ゆっくりがいてくれて幸せだった。 そしてそのような幸せをぶち壊すのが大好きな男がいた。言うまでもない、虐待お兄さんである。 男は新しい虐待法を思いついており、生贄となる家族を探しに森へ来ていた。そこに、 「じゃあお母さんはご飯を探してくるよ!ゆっくりまっていてね!」 「「「「「「ゆっくちまっちぇるね!!」」」」」」 という声。格好のターゲットだとほくそ笑む。 そして巣から出てきた親れいむをすぐさま掴み、持ってきた加工場製透明ケースへ放り込んだ。 「ゆ!なんなのお兄さん!はやくここから出してね!」 必死に出ようとガタガタとケースを揺らすが、当然この程度ではビクともしない。 男はわめく親れいむを無視して、箱を持ったまま戻り、親れいむは一旦隣人に預けた。 もちろん、この隣人も虐待仲間である。 一時間後。 「ゆー…………おかあしゃんおちょいね…………」 「ゆっくちしすぎだよ…………」 食欲旺盛な赤ゆっくり達には早くも空腹が訪れていた。 再び巣の前まで戻ってきた男は、入り口に少量のお菓子をばらまく。 「ゆ!なにあれおいしそう!」 見つけたと思いきやすぐさまかけよる赤ゆっくり達。 あっという間に群がり、ガツガツと食いつき始める。 「「「「「「むーしゃ、むーしゃ!ちあわちぇ~!」」」」」」 投下したお菓子は少量だったため、一瞬にして無くなった。 当然赤ゆっくり達は満腹とはいかないが、これも男の計算である。 「やあ。お菓子はおいしかったかな?」 「ゆ!これおにいちゃんがくれたの!」 「ありがとう!すごくゆっくちできたよ!」 「でもちょっとたりないね!もっとちょうだいね!」 図々しくもさらなる食事を要求してきた。 男は叩き潰したい衝動を抑えながら、赤ゆっくり達を背に歩きながらこう言った。 「ああ、いいよ。ただし次は競争だ。一番早くここまでこれた子に、お菓子をいっぱいあげるよ。 早く来れば早いほど、たくさんのお菓子を食べられるよ」 しばらく歩いた後、これまた極少量のお菓子を足元の地面にばらまく。 「じゃあスタートだ!はやくしないと他の子に食べられちゃうよ!」 少しの間赤ゆっくり達はぽかんとしていたが、その後いっせいに跳ね出した。 全員空腹で何としても食べたいのだろう、皆必死な顔をして向かってきている。 男にとっては誰が一番になろうとどうでもいい。ここで大事なのは着順である。 どのゆっくりが何番目に到着するか、それが後の虐待で重要な意味を持つのだ。 数分後、全ての赤ゆっくりが男の元へ到着した。 やはりまりさ種の方がれいむ種より速いようで、上位3位は赤まりさが独占した。 しかし、ばらまいたお菓子は一番に到着した赤まりさに全て食べられていた。 しかもその赤まりさすら満足しきれない少量である。 「もっといっぱいちょうだいね!」 「かわいいれいむに、おかしをもってきちぇね!」 「おなかすいたよ!はやくちてね!」 清々しいくらい偉そうな態度である。 予想していたとはいえ、やはり腹は立つ。 「よし、じゃお兄さんの家へ来ないかい?たくさんお菓子が食べられるよ!」 「ゆ!おかしがたくさんあるの!」 「はやくつれていっちぇね!」 それを聞くと、男はあらかじめ容易しておいたケースに赤ゆっくり達を入れていった。 このケースは、着順が分からなくならないようにするため中を仕切りで分割されている。 この日のためにわざわざ作っておいたのだ。 「わ~い、おちょらをとんでりゅみたい!」 「たのちいね!」 赤ゆっくりはこれから身に起こることも知らず、無邪気にきゃっきゃと騒いでいた。 男は家に着くと、お菓子も与えず2階のベランダへ向かっていった。 そこには隣りの家のベランダへと繋がる木材があった。幅は赤ゆっくりよりわずかに大きい程度と極めて細い。 その上に赤ゆっくり達を、先ほどのレースで遅いものが前になるように並べていく。 即ち、前に赤れいむ3匹、後ろに赤まりさ3匹である。 ちなみにこの木材、最初は鉄骨のつもりだったが都合の良いものが手に入らなかったので却下された。 「こ、こわいよ!たかいよ!」 「ゆ、ゆっくちやめちぇね!」 ガタガタとふるえ出す赤ゆっくり達。 人間でもこの高さから落ちたら怪我は免れない。体の弱い赤ゆっくりが落ちれば確実に潰れるだろう。 「お菓子ほしいんでしょ。この橋を向こうの家まで渡ればお菓子をたくさんあげるよ」 「ゆ!いやだよ、こわいよ!」 「こんなのわたりたくないよ!ゆっくちたすけちぇね!」 さすがに命の危険を感じれば、お菓子よりも身の安全を優先するようだ。 しかし、この日のためにわざわざこの木材を苦労して作ったのだ。渡らせない気はない。 ここで母れいむを抱えた隣人お兄さんに出てきてもらう。 「お前ら、あの家をよく見てみろ」 「ゆ…………あ、あれは、おかーしゃん!?」 「れ、れいむの赤ちゃんたち!なんでこんなところに…………ふ゛へ゛っ゛」 隣人お兄さんには殴る蹴るの暴行を加えてもらう。もちろん死なない程度に。 さすがは虐待家、生き生きとした表情だ。 「やめちぇね!ゆっくちやめちぇね!」 「おかーしゃんをいぢめりゅなー!」 暴行の間、赤ゆっくり達は色々叫んでいるが、やはり怖いのだろう。橋を渡ろうとはしない。 そんな赤ゆっくり達に向かって、隣人お兄さんが言い放つ。 「ククク…………親を助けたいか……赤子共………… ならば渡れっ…………この地獄への橋をっ…………! ここまで一人でも来れれば助けてやろう…………カカカカッ…………!」 それにしてもこの隣人お兄さん、ノリノリである。 赤ゆっくり達はしばらくはまごまごしていたが、身の危険より親への愛情が高かったようだ。 ついに先頭の赤れいむが、ついに動き出した。 「ゆっくちおかーしゃんをたちゅけるよ!」 「ゆ…………そうだね!みんなでたちゅけようね!」 赤れいむに引き続き、後ろの赤ゆっくり達も少しずつ動き出した。 跳ねるのはやはり危険だと感じているのか、皆這いずるような動きである。 長さは10メートルほど、親ゆっくりならいざ知らず、赤ゆっくりにとってはかなりの距離である。 しかし愛する親を助けるため、恐怖を感じながらも少しずつ進んでいった。 スタートから何分経っただろうか。今のところ落下したゆっくりはいない。 元々幅は赤ゆっくりより少し大きめである。急がない限りはまず落ちることはない。 もう先頭の赤れいむは橋の半分を超えるところまで来ている。 「けっこうかんたんだね!」 「でもきをつけて、ゆっくちすすむんだよ!」 「れいふ゛のあか゛し゛ゃん…………ゆっく゛い゛か゛んは゛って゛…………」 「ほーう、さすがに簡単には落ちないものなんだな」 「ククク…素晴らしいっ……!歓迎するぞ……道開く者……勇者よ……!」 赤ゆっくり達は互いに励まし合いながら進んで行き、親れいむも満身創痍で応援している。 確かにこのまま進んでいけば誰一人落ちず、親れいむの元へ到着するだろう。 だがそれでは何一つ面白くない。いよいよこいつを出す時がきたか。 「はーい、では皆さん聞いてくださーい! この木材渡りにもう一人参加者を追加させまーす!」 「ゆ?もうひとりふえりゅの?」 「だれかな?まりさたちかぞくはみんないりゅよ」 振り返る赤ゆっくり達。そして男の部屋からベランダへ、一匹のゆっくりが飛び出した。 「魔を招き入れての狂宴の舞……パーティーの扉が開く……クククク……!」 「うー!うー!」 「「「「「「れ、れみりゃーーーー!!!!」」」」」」 「あ、あか゛し゛ゃんた゛ち゛!はやく゛にけ゛て゛ね゛!」 パタパタと飛んで現れたのは、隣人お兄さんのペットである体無しれみりゃ。 体付き共とは違って可愛く素直なので、男も気に入っている。 れみりゃは橋の後ろから、飼い主の事前の命で速度を落として飛んでいる。 とはいえ赤ゆっくりが細い橋の上で跳ねる速度よりは速く、少しずつ差は縮まっていく。 赤ゆっくり達も必死で逃げていくが、ここで遅い順に並べた効果が発揮される。 「ゆ!はやくすすんでね!」 「おちょいよ!ゆっくちちないでよ!」 「が、がんばってりゅよ!」 全力で逃げようにも、前にいるのは自分より遅い赤ゆっくり。当然前がつかえる。 どうやら1番手と2番手の赤れいむ、そして5番手と6番手の赤まりさの間がつかえたようだ。 さぞかし後ろにいる赤ゆっくりは焦っていることだろう。 「ぎゃおー!たーべちゃうぞー!」 れみりゃとの差は容赦なく縮まっていく。 実はこのれみりゃ、隣人お兄さんの合図があるまでは赤ゆっくりに喰いつかないように話してある。 単に喰らい尽くして終わるより、パニックになる赤ゆっくりを見ている方が楽しいからだ。 しかしそんなことゆっくり達には知る由も無く必死に逃げるが、空を飛べる捕食種れみりゃには適わない。 ついに6番手、つまり赤ゆっくり達の最後尾にいる赤まりさに追いついた。 赤ゆっくり達の中では最速とはいえ、こう前がつかえていては進めない。 「おち゛ょい゛よ゛お゛お゛おお!!!ゆっく゛ち゛ち゛ない゛て゛え゛え!!!」 「これいじょうはやくできないよ!ゆっくりがんばるね!」 「うー!うー!」 「た゛す゛け゛て゛え゛え゛え゛えええええ!!!」 涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら喚く赤まりさ。 笑顔で追いかけるれみりゃと比べると、何と醜い顔だろう。 「さて、ああ言ってるがどうするよ?」 男はれみりゃをけしかけた後、すぐに隣人お兄さんのベランダまで来た。 もちろん白熱のレースを正面から見るためである。 「ククク……ずれた命乞いだ……」 スッと隣人お兄さんが右手を上げる。『食べてよし』の合図だ。 それを見たれみりゃは嬉しそうに噛り付いた。 「うー!」 「い゛き゛ゃあ゛あ゛あ゛あああああああ!!!!!!」 「れ゛いふ゛のあ゛か゛し゛ゃんか゛あ゛あ゛あ゛!!!」 どんどん食べられていく赤まりさ。 しかし赤ゆっくり達は他人に構っている暇はない、振り返ることもなく進んで行く。 食べられている間はれみりゃの動きは止まるが赤ゆっくりは小さい。食べるのに時間はかからないだろう。 「ゆっく゛ち゛……ちたか゛った゛よ……」 そう言い残し、赤まりさは息絶えた。 赤まりさ一匹では満足できないのか、すぐにれみりゃはうーうーうなりながら動き始める。 あっという間に5番手の赤まりさとの距離は縮まっていく。 「いやあ゛あ゛あああああ!!!!れみりゃこわい゛い゛いい!!!」 後ろからはすぐにれみりゃのうなり声が聞こえてきて、完全に恐怖で取り乱している赤まりさ。 そんな精神状態で、幅が自分よりわずかに広い程度の橋を渡ればどうなるか。 「ゆ!!!!!!!」 れみりゃが追いつく前に、自ら足を踏み外した。そうなると後は重力に従い落下していくのみ。 数秒後、地面にはわずかな餡子が広がっているのであった。二人目の犠牲者である。 そして先頭集団でも異変が起きていた。 「ゆー!!おそすぎりゅよ!!」 「これでもがんばってりゅよおおおおお!!」 先ほどから1番手の赤れいむと2番手の赤れいむが喧嘩している。 まぁ、こうなるように遅い者を前に置いたのだが。 「おそいゆっくりは、ゆっくりたべられちぇね!」 そう言って2番手の赤れいむは、1番手の赤れいむを飛び越えようと跳ねた。 確かに2匹分の幅がない以上、前の赤ゆっくりを抜くには跳ねるしかない。 しかし、橋の幅は自分よりわずかに大きい程度。しかも落ちたら死という恐怖心もある。 そのような肉体的にも精神的にも不安定な状態で、跳ねたりするとどうなるか。 「ゆ!!!!!!!」 当然のように赤れいむも足を踏み外した。 数秒後、この赤れいむは先ほどの赤まりさと同じ死の運命を辿ることとなった。 「ゆう゛う゛う゛うううううううう!!!」 あっという間に半分の子供を失った親れいむが騒いでいる。 「もう止めてほしいってこいつは言いたそうだな」 「ククク……限度いっぱいまで行くっ……!地獄の底が見えるまでっ……!」 さて、残っているのは最初の並び順で1番手の赤れいむ、3番手の赤れいむ、4番手の赤まりさ。 次にれみりゃのターゲットとなるのは赤まりさである。 「うー!うー!」 5番手の赤まりさは食べずに終わったため、4番手の赤まりさとの距離は近めである。 このままでは追いつかれると思ったのか、赤まりさは思わぬ……いや、予想通りの行動に出た。 レース当初から距離が近かった3番手の赤れいむとは今やほぼ同じ位置にいたのだが、 「ゆっくちちね!」 「ゆ!ゆっくちやめちぇね!」 何と後ろから体当たりを仕掛け始めた。 さすがまりさ種、姉妹を犠牲にしてでも自分が生き残ろうとは何という狡猾さであろうか。 「ゆっくちちね!ゆっくちちね!」 「やめちゃね!ゆっくちちてね!」 「なにやっでるの゛お゛お゛!!やべでえ゛え゛え゛!!」 親れいむの絶叫も意に介さず、体当たりを続ける赤まりさ。 そして何度目かの体当たりの時、ついにその時は来た。 「ゆ…………ゆぅぅぅぅぅ~~~~~!!!!!」 赤れいむは落下していき地面に激突、物言わぬ餡子となった。 空いた道をすいすいと進んで行く赤まりさ。 この赤まりさは、身を挺して家族を守った親まりさにはあまり似ていないようだ。 「きさまらっ……それでも……人間かっ…!?」 男はあえてツッコまなかった。 さて、いよいよレースも大詰め。先頭の赤れいむ、そして後ろの赤まりさもかなりゴールが近い。 しかしれみりゃもここに来て飛ばしており、赤まりさのすぐ後ろまで来ている。 「おちょいよれいむ!なにやっちぇるの!」 「ゆ!もうちゅぐだからね!」 れみりゃとの間に赤まりさを挟んでいる赤れいむはまだ余裕があるように見える。 一方れみりゃに迫られている赤まりさにはそんな余裕はない。かなりイライラしているようだ。 男は、これは再び赤まりさが赤れいむを突き落とすも、れみりゃに追いつかれて喰われるかと予想した。 赤まりさにとってもはや赤れいむはただの障害物でしかない。 しかし、親れいむはもちろん、男も、隣人お兄さんも予期せぬ行動に出たのだ。 「ゆひ゛い゛っ゛!」 なんと赤まりさは赤れいむの後ろ頭に噛み付いたのだった。 そして赤れいむを口にくわえながら、くるりとれみりゃの方へ振り向いて、 「それをあげるから、まりさはゆっくちにがしちぇね!」 ササッとゴール目がけて走り出した。赤れいむは「ゆ゛……ゆ゛……」と息も絶え絶えだ。 確かに突き落とすより手っ取り早いし、れみりゃが食べる時間も稼げる。 しかし、まさか自分が生き残るためにここまでやるとは。親れいむも衝撃的すぎたか唖然としている。 「全く、いつもながら何て奴だよ、まりさ種ってのは……」 「ククク……面白い……狂気の沙汰ほど面白い……!」 隣人お兄さんが右手を上げ、すぐさまれみりゃが噛み付いた。 「うー!うー!」 「ゆ゛う゛…………」 赤れいむはすぐに食べ終わったが、もう赤まりさは捕まらない。 れみりゃが追いつく前に、男達と親れいむの待つ隣人ハウスのベランダに飛び込むことができた。 「ついたよ!さすがまりさだね!ゆっくちおかしをもってきちぇね!」 姉妹を二人も殺しておきながら堂々とお菓子を要求するとはふてぶてしさ極まれりだ。 そんな赤まりさを睨みつける目があった。ボロボロになった親れいむである。 「おかーしゃん、まりさがたすけにきちゃよ!もうだいじょうぶだね!」 親れいむに擦り寄っていく赤まりさ。 しかし、親れいむはそんな赤まりさに体当たりをしかけ弾き飛ばした。 「いちゃいよ!おかーしゃん、なにするの!」 「と゛う゛し゛て゛…………」 「ゆ?」 「どうじであんなひどいごどじたのお゛お゛お゛!!!!!! れいぶのあか゛し゛ゃん、みんなしんし゛ゃった゛んた゛よお゛お゛お゛!!!!!」 「あんなおちょいやちゅら、ゆっくちできないよ!しんでとうぜんだよ!」 「ひと゛い゛よ゛お゛お゛お゛お゛お゛!!!!!!」 親れいむは何度も赤まりさに体当たりをしかける。 姉妹殺しの赤まりさには、もう親の愛情なんて残ってないのだろう。 「いちゃいよ!やめちゃね!」 「ゆっぐりじね!ゆっぐりじ……ぶびゃっ゛!!!」 あまりにうるさいので男は殴りつけた。 ぴくぴくと痙攣し、餡子も吐き出しているが死んではいないだろう。 「たちゅかったよ!おにーしゃんありがとう!かわいいまりさにてをあげるなんて、さいてーなおやだね! それよりはやくおかしをもってきちぇね!」 「ああ、そうだな。だがその前に…………」 「うー!うー!」 赤まりさの気付かぬ間に、飼い主の隣人お兄さんの元にれみりゃが戻っていた。 「ゆ!れみりゃはゆっくちできないよ!はやくおいはらっちぇね!」 「いや、こいつにお前を食べさせるのが先さ」 「な、なにちょれ!おかしはどうなったの!」 「お菓子は出す……出すが……今回まだその時と場所の指定まではしていない…… そのことをどうか諸君らも思い出していただきたい……つまり我々がその気になれば お菓子の受け渡しは10年後、20年後ということも可能だろう……ということ……!」 「つまり、お前がれみりゃに襲われた後、もし生きてたらあげるかもってことさ」 「うー!うー!」 「な…………な゛に゛ちょれえ゛え゛え゛え゛ええええ!!!!!!」 そして隣人お兄さんが右手を上げ、れみりゃが赤まりさに飛びかかっていった。 ちなみに親れいむは男と隣人お兄さんがおいしくいただきました。 あとがき 気が付けば……鉄骨渡りっ…! クォータージャンプを作るつもりだったのに……やってしまったっ……! さすがのうp主も先に鉄骨渡りを作るとは猛省っ……! このSSに感想を付ける
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うちの庭はゆっくり達によく荒らされる。 花壇(すでに雑草だらけ)や池、そして外敵が少ないせいなのだろう。いつの間にかゆっくりが来て荒らしていくのだ。 今は面倒なので荒らされたまま放置しているが、それでもゆっくり達は煩いし何かとうざい。 最初は潰して駆除していたが、飽きずに奴らは来る。ゆっくりの死体を放置していても「はふはふっ」と食う始末だ。きもい。 なのでこの際やつらで遊ぶことにした。 そのために今回使うのは『ギロチン』。そう、首をはねる処刑道具だ。 今回はそれをゆっくりに使うわけだ。 早速庭にいるゆっくり霊夢の家族を部屋に連れていくことにする。 一週間ほどから庭に住み着いているゆっくり霊夢の家族は子ゆっくりが多く、マジでうるさい。 普段は閉め切っている庭への入口を開けるとちょうどゆっくり家族は池の脇でゆっくりしているところだった。 俺は奴らに近づくと『⑨でもわかるゆっくり虐め by阿Q』に従って声をかける。 「ゆっくりしていってね!」と。 「「「「「「ゆっくりしていってね!!!」」」」」」 ああうるさい。特に子ゆっくりの声は甲高くて耳に障る。 「ゆっ、おじさんどうしたの? ここはれいむたちのおうちだよ!!」 「いまみずばでゆっくりちてるのー!」「おじさんゆっくりできるひとー?」 おじさんとはひどい。まだ10代(16進数)だぞ。しかし我慢だ。 「ああ、ゆっくり出来るよ。おにいさんはほら、隣のおうちに住んでいてね。挨拶にきたんだよ」 「そこのおうちはおじさんのおうちだったんだ!」 お、一応そこの分別はあるんだな。ただこの庭も俺の家なんだけどな。 「おじさん!」 バスケットボール大ほどの一番大きな母ゆっくりが話しかけてくる。他の子ゆっくり達は水遊びに戻っていた。 「ん、なんだい?」 「おじさんのおうちはきょうかられいむのおうちにするね!!」 前言撤回。やっぱこいつら分別ないわ。いや、そういう次元の問題じゃないわ。 「あ~、だめだよ。でもおにいさんのおうちに来てゆっくりさせてあげてもいいよ」 「ゆっ! じゃあゆっくりおうちに入れてね!!」 あいよ、と子ゆっくり共々我が家へ入れてあげる。 入ってすぐの部屋が今日のために用意したゆっくり虐待ルームだ。なのでゆっくりに使う道具以外は何も置いてない殺風景な部屋である。 「はい、ここがおにいさんのおうちだよ。ゆっくりしていってね!」 「ゆっくりしていくね!!」と母ゆっくり。 「ゆっくりちていくね!」「ゅ!なにもないよ!」「でもきのいたが冷たくて気持ちいいよ!!」 続く子ゆっくりは反応が様々だ。えぇと、全部で11匹か。母親ゆっくり含めて12匹と。 「おじさん、れいむたちのあたらしいおうちには食べ物がないの? ゆっくりもってきてね!」 「ちょっ」 もう新しいおうちとか言いやがった。ありえん(笑) …というかおじさんはいい加減やめて。 「わかったよ。でもその前にゆっくり楽しめるおもちゃで遊ぼうよ」 「あとでいいから食事もってきてね!」といい加減うざい母ゆっくりだが、子ゆっくりは楽しめるおもちゃという言葉に反応する。 「おもちゃ! ゆっくりだしてね!」「ゅーゅー♪」「おもちゃがさきにほしいよ!!」 そんな感じで子供が言うので母親も食事は後でよくなったようだ。 そしてようやくギロチン様の登場だ。 ゆっくり向けに作ったので高さは大体1m。刃はギロチンの高い所に留め具で固定されていて外すと刃は落ちるというわけだ。 さらに刃の背中側には一本の長い縄が付いていてそれを引っ張っていれば留め具がなくても落ちることはない。 ちなみに威力は実証済みだ。腕ぐらいに太い木の枝もバッサリだぜ。さすが冥界の刃だ。 ああ、もう早くこいつらを真っ二つにしたい。でももう少し我慢だ。 「ゆっ? なにそれ???」「たのしめるの??」「おじさんこれでゆっくりできるの??」 子ゆっくりは見たことのない道具に興味心身だ。 「まぁ待てこうやって使うんだよ」 俺はポケットから饅頭を出してギロチンへとセットする。 「ゅー!おまんじゅうたべたいよ!!」「ゆっくりわけてね!!」 なんて言いながらギロチンに突っ込んでくるゆっくりしない畜生どもを弾く。食べ物見るとこれだよ。 「ゆっくり見て行ってね!」 「「「「ゆっくりみていくね!!!」」」」 条件反射でゆっくり挨拶を返すゆっくり家族。扱いやすいなー。 「よーし、みてろよー」 留め具を外す。縄を手から放す。刃が落ちる。饅頭真っ二つ。 まさに一瞬だ。 ゆっくり達もびっくりしてるようだ。 「ゅー、こわいよー!」「おじさんこれじゃゆっくりできないよ!!」「ほかのおもちゃよういしてね!!「あとおかしもだしてね!!!」 さすがのゆっくりも危険なものだと判断出来たらしい。それはむしろ好都合だ。 俺は俺に向かって食事をもってきてねとうるさい母ゆっくりをギロチンの台にセットする。 「ゆゆっ! なにするの!!? ゆっくりやめてね!!!」 無視しながら母ゆっくりが逃げ出せないように固定する。あと、しゃべらせないために口に布をつめてやる。 「むぐーっ! んんぐぐぐぐーーーー!!!」 「ゅ! おじさんなにするの!!」「おかあさんをゆっくりはなしてね!!」「ゆっくりできないおじさんはしね!!!」 子ゆっくり達は勇敢にも体当たりしてくる。しかしダメージなどあるわけがない。 「おいおい、これからが楽しいんだぞ?」 「なにいってるのかわからないよ!! ぜんぜんたのしくないよ!!!」「はやくおかあさんをゆっくりたすけてね!!!」 11匹の子ゆっくりが抗議してる中、俺はギロチンの留め具を外した。 「アーッ!!」「おがあざああああん!!!」「やめでえぇぇぇえ!!!」「ゅーーー!!!」 しかし刃は落ちない。そりゃそうだ。刃に付けた縄を掴んでるので落ちることはない。 「ゅっ! おちてこないよ!!」「ゆっくりたすかったね!!」「おじさんのばーかばーか」「ゅー♪」 「お前ら馬鹿か? 馬鹿だろ? いや、馬鹿だ。俺がこの縄を放したらどうなるか覚えてないのか」 言うと勝ち誇っていた子ゆっくり達の顔が固まっていく。 「い”やぁぁぁぁぁ!!」「おじさんばなざないでぇぇ!!」 「じゃあこの縄をお前らが引っ張れよ。俺はもう放す」 俺はそう言うと縄を刃の上方、ギロチンの頂点に備え付けていた滑車に引っかけると子ゆっくり達に残りの縄を投げつけた。 長い縄なのでゆっくり全員で引っ張れるだろう。 すると子ゆっくり達は数秒考えた。 「みんなでおかあさんをゆっくりたすけるよ!!」「なわをみんなでひっぱるよ!!」「ゅー! ひっぱるょ!」 ゆーゆーと何やら気合い入れると、子ゆっくり11匹は縄を咥えて引っ張りだした。 それを確認すると俺は縄から手を離した。と同時にゆっくり達に襲いかかる重み。 「おもひよ!!」「へも、みんふぁでふぁんふぁればふぁいようふだひょ!!」 翻訳すると重いよ、でもみんなで頑張れば大丈夫だよ、か。いつまで保つやら。 だがしかし、子ゆっくり達の母を思う力は強いようだ。すでに始ってから3時間が経とうとしていた。 がんばってはいる。だが小さなゆっくりほど疲れが見てとれた。 「がんばるなぁ。そんなお前たちに感動したからお菓子用意したぞ」 床に色んな種類のお菓子をばらまいてやった。なんてやさしいんだ俺。 ゆっくり達は物欲しそうな瞳で床に散らばったお菓子を見る。 ちょっと縄から口を放して跳ねれば食べられる距離。そう、母を見捨てて家族を裏切ればの話だ。 子ゆっくり達は家族の絆と食欲の間で揺れ動く羽目になった。 (これからが楽しいところだな) ゆっくり達は食欲に弱いからな。食料が無いために共食いするなんてこともよくあること。 俺は隣の部屋へ移ると、扉にあけた覗き窓から様子を観察することにした。 お菓子を床に置いてから5分程だろうか。もっと短かったかも知れない。 一番のちびゆっくりが食欲に負けてお菓子へと飛び付いたのだ。 「ゅー!おいちいよ! ゆっくりできるー!!」 母や姉にも遠慮せずにバクバク食べるちびゆっくり。 子供なら仕方ない、そう言えるのは通常時のみ。今はゆっくり達にとっては緊急事態なのだ。 乱闘でも起こるかなと思ったがこのゆっくり家族は思いのほか絆が強いようだった。 一番の姉であろうゆっくりは言う。 「ゆっくりみんなのぶんもってきふぇね!!」「おかしみんなでたふぇたらげんきになっておかあさんたすけられるよ!!」 ちびゆっくりを責めず、今のゆっくり達にとって最良になりえる指示を出した。 だが、ちびゆっくりはその言葉を聞くと、 「ゅ! ぃゃだょ!!! これはぜんぶわたちがたべるの!!」 「だめだよ! おがあざんじんちゃうよ!!」 「おねえちゃんがたすけてね! わたちつかれたよ!!」 「つかれてるのはみんないっしょだよ!!」 しかしここで妹ゆっくり達が動き出した。 このままではちびゆっくりに全部のお菓子を食べられてしまう。 一人ぐらい縄を放しても大丈夫だろう。 食欲と集団心理が彼女たちを動かした。 一匹、そしてまた一匹と縄から口を放してお菓子に口をつける。 「はふっはふっ! うっめめっちゃうっめ!!!」 「な"んでみんないっぢゃうの"おぉぉぉぉ!!」 姉の悲鳴が響く。もはや縄を咥えて引っ張っているのは二匹だけだった。 姉妹の中でも大きい二匹だ。少しの間がんばった。つまり少しの間しかもうがんばれなかった。 ザンッ!!!! 「むぐっ!!?」 無常な風切り音と母ゆっくりの小さな断末魔が聞こえた。 見ると母ゆっくりは綺麗に真っ二つに斬られている。少し意識が残っているようだったが、餡子が床へ流れ出て死んだ。 さて、子ゆっくりはというと、 「なんで放したのぉぉぉ!!!」「おねえちゃんのせいだー!!」 「おねえちゃんとはもうゆっくりできないよ!!」「ゆっぐりじねぇぇぇ!!!」 ひどい話である。最後までがんばった姉ゆっくり達を、がんばらなかった妹ゆっくり達が責める。それもお菓子を頬張りながら。 姉ゆっくりはぷるぷると涙を浮かべながら震えていた。それは何かを我慢しているようだ。 「ゅー♪ がんばれなかったおねえちゃんはゆっくりちんでね!!」 一番最初に縄を放し、さらに家族の崩壊を招いたちびゆっくりの罵倒がトリガーとなった。 「うががあああああ!!!」「あががががが!!!」 突然ゆっくりとは思えない叫び声を上げて二匹の姉ゆっくりが暴走する。 二匹が向うのはまずちびゆっくり。 「ゅ!? うべぇっ!!??」 突進してきた姉ゆっくりに反応もできずに潰されてしまった。 もう一匹の姉ゆっくりは生きてるとも死んでるとも判別付かないソレに飛び乗るとそのまま何度も跳ねた。床に広がっていく餡子。 これでちびゆっくりは完全に死んだ。 「ゆ!? おねえちゃんたちやめてね!!」「ゆっくりさせてえぇぇぇぇ!!!」 「やあぁぁぁ!!!」「あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"」 鬼と化した姉ゆっくり達に恐怖し、バラバラに部屋を跳ねまわる。 鬼ごっこの始まりだな。ただし鬼は殺る気モードの二匹だ。 追うものと追われるものでは動きがまるで違う。 追われるものは恐怖からか上手く跳ねまわれず、終いには転ぶ。 そうして小さく力の弱いゆっくり達から鬼姉ゆっくりに挽き潰され、噛みつかれ、そして食われた。 「や”あ”あ”あ”!! お、おじさんどこいったの!? おじさんだずげでぇぇぇ!!!」 おにいさんと言え。そしたら考えたかも知れない。あ、だめだ。食われたw そして10分程度でリアル鬼ごっこは終了し、11匹いた子ゆっくり達も姉ゆっくり2匹を残すのみとなった。 体は餡子にまみれ、髪には白髪がまじり、目は恐怖ではなく狂気で見開いていた。 こえぇ、これは子供が見たら絶対泣くぜ。 あまりに怖いからこの二匹はこのままこの部屋に放置しよう。 「ぎゃぅぁあばば!!!」 「なんだなんだ?」 その夜、あの二匹を放置した部屋から悲痛な声が聞こえたので慌てて見に行った。 「こいつら…」 するとその二匹が争っていた。口元には餡子。見ると部屋にまき散らされた餡子が無くなっていた。 ギロチンの周り、母ゆっくりが在った場所にも、だ。 (こいつら食べやがった。あんなに助けようとしていた母ゆっくりまでww) そしていま、お互いを食べようと睨み合っているのだ。 これは食欲じゃないな。お互い食べられるかもと信用できないんだ。 勝負は意外とあっさり終わった。 一匹が体当たりすると、体当たりされたゆっくりは転がっていった。 転がったゆっくりは台に落ちている刃へ当るとそこで止まった。 「ぐぁ…ぅ」 体当たりされたゆっくりは相当な衝撃を受けたせいで朦朧としている。 体当たりしたゆっくりはギロチンの縄を咥えて引っ張った。 数時間前は助けるために引っ張っていた縄。しかし今度は殺すために縄を引っ張った。 動けないゆっくりは、刃が上方に昇ったせいでよっかかる物が無くなったのでギロチン台へと突っ伏す。 それを確認した縄を咥えたゆっくりは、縄を放し、姉妹を処刑した。 「うげげげげげげげげげげげげげげげげげげげげ!!」 鬼と化し、完全に狂ったそのゆっくりは一晩中笑い続けた。 結局俺はその狂ったゆっくりを野へ放してやった。 殺したら何だか呪われそうだし、家に置いていても笑い方が怖くて眠れないしな。 それからしばらく我が家の周りに種別問わずゆっくりの死体が増えることになる。 数ヶ月後にはゆっくり達の屍の上で鬼のような顔をしたゆっくりが息絶えていたらしいということを聞いた。 終
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飼いゆっくりれいむ 27KB ・れいむが死にません。 ・エロくありません。 ・最近れいむいじめがひどかったんで、れいむ愛でモード突入中。 ・仕事の都合もあって製作ペースが戻らないので、まだまだリハビリが必要な感じです。 『飼いゆっくりれいむ』 D.O 我が家は、築100年を軽く超える古風な木造家屋である。 爺さんの若かった頃は農業をしていたとのことなので、蔵もあれば庭もあり、 さらにその周囲は生垣をはさんで小さな林まで広がっている。 外から見れば、歴史の重み、どころか幽霊屋敷の雰囲気漂わせていることだろう。 現在の主である私が手入れを怠っているので、庭はコケと背の高い雑草が生い茂り、生垣も所々穴が開いているからなのだが。 私が子供の頃は、周囲にまだ多くの農家も残っていたが、 十年ほど前に、ゆっくりの大規模な襲撃が起こり、すっかり疲弊してしまったようである。 もう少し山に近い田舎に立ち上がった、のうかりんを使った実験農場計画が始まった頃に多くの農地は売却され、 実験農場が順調な現状を考えると、このあたりも数年後にはのうかりん印の農場になりそうだ。 現在では町、というには空き家が多すぎる、少々寂しい地域となってしまっている。 そんなある日、仕事から帰ってみると、 庭にサッカーボールサイズと、テニスボールサイズの饅頭が一つづつ落ちていた。 日が暮れているので良く見えないが、赤白リボンの奴はたしかれ・・・れ?ゆっくりだ。 「ゆゆっ!おにーさん、ゆっくりしていってね!」 「ゆっくちしちぇっちぇにぇっ!」 「・・・・・・。」 家の電灯に照らされてみれば、薄汚れていて何ともゆっくりしていない奴等である。 少なくとも、見ているこちらとしてはゆっくりできない。 親子なのは間違いなさそうだが、親の方は全身余すところ無く、 マジックで唐草模様が描き込まれているあたり、町からやってきたのは間違いないだろう。 「にんげんさん、れいむはしんぐるまざーなんだよ!」 「へぇ・・・。で?」 「かわいそうなれいむたちを、ゆっくりかっていってね!」 「きゃわいくってごめんにぇっ!」 「・・・はぁ。」 なんだか、やり遂げた表情でこちらを見ている。 刈って、狩って、・・・いや、飼っていってね、か? どうやら、こんなにゆっくりしたおちびちゃんなんだから、人間さんも飼ってくれるに違いない、ということらしい。 とりあえずサンダルの裏を、その自信満々の顔面に押し当てて、塀の方に転がしてやることにした。 「ゆべしっ!」 「ゆぴぃぃいい!」 「・・・ペッ!」 噛んでいたガムが母れいむのリボンにジャストミートする。 「・・・・・・飯作ろ。」 別にゆっくりとやらに大した関心はない。 単に、コソコソ隠れているなら可愛げもあるが、ずうずうしさが気に入らなかっただけである。 これまでも野良猫やらなんやら、しょっちゅう仮の宿に使われていたので、 今更ゆっくりが庭に舞い込んだところで気にしない。 糞をばら撒かれないだけ、犬猫よりはありがたいくらいだ。 庭に住みたきゃ勝手に住めばいい。 こちらには当然世話する義務なんぞ無いのだから。 「ゆ゛、ゆ゛、ゆ゛、ゆ゛・・・・」 「ゆっくりー!」 痛みから回復したれいむ親子の方は、感動に打ち震えていた。 なにせ気がついたら、母れいむのリボンにペタリとついているのは、あの憧れの飼いゆっくりバッジ。 れいむも遠くで見ていたときは気づかなかったが、バッヂがまさか人間さんが口から吐き出されたものだったとは。 まあ、自分達もナワバリ(無意味極まるが)にしーしーでマーキングすることは多いのだから、そういうものなのだろう。 ・・・などと考えながら、リボンにへばりついたガムを、嬉し涙に潤んだ目で眺めていた。 そう、れいむはついに、ゆっくりの中でも最もゆっくりできると言われる、 あの飼いゆっくりにしてもらえたのであった。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 翌朝。 便所から出て縁側を歩いていると、庭の隅に放置していた木箱から、れいむ親子が飛び出してきた。 「「ゆっくりしていってね!!!」」 「ん?まだいたか。」 朝からうるさい奴らだ。やはり猫の方がましだな。 「ゆーん。おにーさん、れいむたちにあさごはんちょーだいね!」 「ちょーらいにぇっ!」 昨日のゆっくり共が、これから仕事に行くという時に、なんだかずうずうしくゆぅゆぅ鳴いている。 「・・・・・・庭の草でも花でも、自分で適当に食え。」 「ゆゆっ!?おはなしゃん、たべちぇいいにょ?やっちゃー!」 「ゆーん、ごはんさんいっぱいだよ~。」 勝手に住むのはかまわんが、ゆっくりフードたら言うものまで買ってやる気など無い。 というか、ペットでもないのにいちいち飯などやらん。 「むーしゃ、むーしゃ。しあわせー。」 「むーちゃ、むーちゃ。ゆ・・ゆぇーん。」 「どうしたの、おちびちゃん。」 「れいみゅ、こんにゃにむーちゃむーちゃちたの、はじめちぇ。」 れいむ達は、飼い主であるおにーさんの愛情を全身で味わっていた。 なにせ、適当に食え、と言って指差した庭には、 柔らかそうなゆっくりした草、 タンポポやシロツメクサの類の雑草寄りの花、 背の低い木には実や柔らかい葉っぱ、 それに、今は何も成っていないが柿やビワの木も生えており、季節が来たら食卓を飾ってくれることだろう。 当然昆虫やミミズも、その気になれば取り放題だ。 ここは、森の中にあったとしたら、数十匹のゆっくりを余裕をもって支えることができる最上級の狩場であった。 それらが全て、この2匹だけのためのごはんだと言うのである。 「おにぃさぁん、ありがとぉぉぉおおおぉぉ。」 そんなある日、夕食の生ゴミを袋に入れて、裏庭のポリバケツに入れようとしたところ、 ゆっくり共が、よだれを滝の様にたらしながらこちらを見ていた。 ・・・・・・そういえば、今都会では『ゆっくりコンポスト』なるものがはやっていると聞く。 正直言って生ゴミを貯めこむのは嫌だし、こいつらでも使ってみるか。 「・・・食え。」 翌朝、袋の中身がきれいさっぱりなくなっていた。 袋に何かが入っていた形跡すら無い。よだれらしきものでベタベタではあるが。 「ゆっくちちたおやさいしゃんだったにぇっ!」 「おにーさんにありがとうってするんだよ。」 「ゆっくちりきゃいしちゃよ。」 「なるほど。こいつは便利だ。」 それからというもの、あの親子は毎日ポリバケツに放り込むはずだった生ゴミを、おやつだと大喜びで食べている。 生ゴミを放置しすぎて増えていたりぐるとかも減った。 生ゴミがなくなったからか、りぐるも食べているのか・・・ しばらくすると、いちいちこいつ等が『おうち』とやらにしている、庭の隅の木箱まで生ゴミを持っていくのもめんどくさくなってきた。 まずは縁側の下に少し穴を掘り、用済みとなったポリバケツを横倒しにしてはめ込む。 ポリバケツの内側に土をいくらか入れ、周囲の穴との隙間にも土を詰める。正面から見るとパッと見トンネルのような感じだ。 あとはあのゆっくり親子を中に放り込んで、自家製コンポストは完成。 「ゆわーい。きょきょはれいみゅたちのおうちなんだにぇ。」 「ゆっくりー!おにーさん、ありがとう!」 なんかぽいんぽいんと跳ねて喜んでいるが、台所からも食卓からも近いここが、 生ゴミを放り込むのに適していただけだ。 「ん、で、あと何が必要だ?」 「「ゆぅ?」」 なんといっても、使い道ができた以上、もはや野良猫と同等ではない。 金をかけてやるつもりはないが、それなりのメンテナンスはしてやろう。 コンポストとしてある程度長持ちしてくれなければ困るからだ。 「ゆ、ゆぅーん!れいむはみずあびができたらうれしいよ。きたないとゆっくりできないよ。それと・・・」 「それと?」 「おちびちゃんにも、ばっじさんがほしいよ!おちびちゃんもかいゆっくりのばっじさんがほしいよ。」 水浴びか。なるほど、こいつ等が饅頭のくせにカビないのは不思議だったが、やはり不潔にしておくのはよろしくないといったところか。 こっちとしても軒下にサッカーボール大のカビ饅頭があるのは気分が悪い。自分たちで清潔にしてもらおうか。 あとは・・・ん?おちびちゃん・・・にも? ・・・・・・妙に馴れ馴れしいのも合点がいった。まさか飼われているつもりだったとは。 まあ、使い道がある今となっては都合がよくもあったが。 「水は、そうだな。このタライに水を入れといてやる。勝手に使え。」 「ゆっくりー!」 「それと・・・バッジねぇ。ああ、あれでいいか。」 持ってきたのは、私が中学生時代に学生服につけていた、襟章だった。 鈍く銀色に光る襟章、どうせこいつ等がバッジとやらを活用する日は来ないのだから、これで十分だ。 リボンに乱暴にネジ式の襟章を突き刺して固定すると、赤色の中に鈍く光る銀色は、思いのほかしっくりときた。 「ゆわーい!ゆっくちちたばっじしゃんだー!」 「ゆぅぅ、よがっだねぇ、よがっだねぇぇえ、おぢびじゃぁぁああん。」 喜んでもらって何よりである。この調子で雑草むしりと生ゴミ処理を頑張ってもらいたいものだ。 翌日には、縁側下のコンポストの近くに「おといれ」と称してうんうん用の穴も掘っていた。 生活の場に排泄物を置いておくのはやはり嫌なのか。だが、これはこちらとしても都合がよかった。 このうんうんという排泄物については、定期的に土と雑草に混ぜて花壇の肥料にしている。 なかなか良質なようで、しかも採集の手間も要らないしありがたいものだ。 「ゆーん、おにーさん。おといれのおそうじしてくれてありがとう。」 「うんうんがなくなっちぇ、ゆっくちできりゅよ。」 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− こうしてれいむ親子がコンポストとなった数日後、家の庭に最近ご無沙汰だった来客が来た。 「ねこさんだぁぁあああ!ゆっくりできないぃぃぃ!!」 「ゆぴぃぃ、おきゃあしゃんこわいよぉぉ!」 「ん、ああ、トラか。久しぶり。」 生垣の穴から庭に入ってきたのは、近所で気ままな野良生活を送っている猫だ。 こいつに限らず、我が家を通り道にする猫は多い。 「ゆぁぁぁぁ、おにーさぁぁん。ねこさんこわいよぉぉぉぉ。」 「ゆっくちさせちぇぇぇぇ。」 「・・・嫌なら自分でなんとかしろ。」 「「ゆぅぅぅ、ゆっくりできないよぉ。」」 別にサッカーボールサイズの良くわからん物体にじゃれつく様な、酔狂な猫達でもないが、 町生活でトラウマでもあるのか、度重なる猫の襲撃に、れいむ親子は自分達で何とかすることにしたようだ。 数日後から、徐々にだが、目に見えて生垣の穴がふさがり始めた。 「ゆーえす!ゆーえす!」 「おきゃーしゃん、はっぱしゃんもってきちゃよ。」 「じゃあおちびちゃん、このすきまにはっぱさんをおしこんでね。」 「ゆっくちりきゃいしちゃよ。」 生垣や塀の隙間に、小石を詰め、小枝を刺し、上から土を盛って、また葉っぱや枝を詰める。 近くで見るとやはり幼稚園児の工作の域を出るものではないが、遠目には生垣に溶け込んで見えなくも無い。 何重にもゴミを積み上げているので、強度のほうはちょっと蹴りを入れたくらいでは吹っ飛ばないくらいになっていた。 「これでねこさんはいってこれないね!」 「ゆっくちー。」 「にゅぁ~ん・・・ぐるるる。」 ・・・・・・。 「「どぼぢでねござんはいっでるのぉぉぉおお!?」」 「・・・塀の上からだろ。」 まあ一応は通りにくくなったので、特に頻繁にここに来る数匹以外は入ってくることも無くなり、 多少は平穏になったようだ。 それにしても、なんだか最近庭がきれいになってきた気がする。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 生垣の穴がれいむによってあらかた埋まった数日後、 久しぶりに友人が家まで遊びに来た。 「ゆゆっ!?おにーさんのおともだち?ゆっくりしていってね!」 「ゆっくちしちぇっちぇにぇ。」 「おー、間知由。お前ゆっくり飼ってたんだな。エラい装飾過剰だけど。」 「いや、飼ってないし、あの唐草模様は来たときからだ。俺の趣味じゃない。」 「ふーん。つってもバッジついてんじゃん。」 「ありゃガムだ。」 「え゛・・・。」 「ああ、みかんの皮は庭のポリバケツに放り込んどいてくれ。」 「え?これってこいつらのおうちだろ?」 「いや。コンポスト。」 「んー。・・・え゛ぇ?」 「ゆわーい、おやつだにぇ!ゆっくちありがちょー。」 「むーしゃ、むーしゃ。しあわせー。」 ついでに、夕食の魚の骨も放り込んでおいた。 「ぽりっ、ぽりぽりぽり・・・ゆっくりー!」 「・・・・・ふーむ。」 「どうした?」 「いや。ゆっくりって、案外飼いやすい生き物なのだろうかと思ってな。」 「ただの饅頭だろ。・・・・・・何だよ、その目は。」 「まったく。世の中にはどんだけ愛情注いでも懐かれない奴もいるってのに。」 「そんなもんかね。」 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− そして、庭が放置しっぱなしの幽霊屋敷状態から、見違えるようにきれいになった頃、 れいむ達の平穏な毎日に、突然不幸が舞い降りてきた。 「Zzzzzz・・・。」 「すーや、すーや。」 今日は日曜日。おにーさんも日当たりの良い縁側で昼寝中。 れいむ親子も庭に生えた木の木陰でゆっくりと惰眠をむさぼっていた。 そのとき庭に、普段と違う空気が漂う。 「うー。」 「ゆぅ?・・・すーや、すーや。」 「あまあまー。」 「ゆ・・・すーや、すーや。・・・・・・れみりゃだぁぁぁああああ!!!」 庭に突然飛来したのは、本来夜行性のれみりゃ(胴無し)。 庭のすぐ奥にある林は、昼でも薄暗く、たまに昼でも活動するれみりゃが現れたりする。 しかも、このあたりは農家だったこともあり、害ゆ対策として、れみりゃを大量飼育していた時期もあったので、 最近森の奥でしか見なくなったれみりゃ種もチラホラいたりするのだ。 「おちびちゃん、ゆっくりにげるよ!」 「ゆあーん。れみりゃはゆっくちしちぇにぇ。」 ぽよん、ぽよん、と大急ぎでおうちに飛び込むれいむ親子。 れみりゃは追ってこなかった。どうやら助かったようである。 しかし、一つだけ気がかりがあった。 「ゆぅぅぅ、おきゃーしゃん、れみりゃはゆっくちできにゃいよぉ。」 「ゆ!おちびちゃん。ここはおにーさんがつくってくれたおうちだから、れみりゃなんてはいってこれないよ!」 「ゆっくちー。でみょ・・・。」 「おちびちゃん?」 「おにーしゃん、すーやすーやしてたよ?れみりゃにゆっくちひどいことされてにゃい?」 「ゆゆっ!?」 「そろーり!そろーり!」 おにーさんの無事を確かめるべくおうちから慎重に這い出るれいむ。 見つかったら命はないだけに、そろーりそろーりにも力が入る。 そして、れいむは驚愕の姿を目撃した。 「うー!うー!」 「Zzzzzz・・・・、じゃま・・・」 ・・・・・・れみりゃがおにーさんにじゃれていた。 「ゆぁぁぁああああ!おにーさんがたべられるぅぅぅううう!!!」 「うー?」 「やめてねっ!おにーさんをたべないでねっ!れみりゃはゆっくりどっかいってね!!」 ゆっくりしたおにーさんを助けるべく、れいむはれみりゃに立ち向かう。 しかし、口にくわえた木の枝をどれほど振り回しても、空を舞うれみりゃ相手には届かなかった。 「ゆぅ、ゆぅぅ、どうしてとどかないのぉぉ。」 「うー!あまあまー。がぶり。」 「ゆひぃぃぃぃ、れいむのあんこさんすわないでぇぇぇぇ・・・。」 「おきゃあしゃぁぁあん、ゆっくち、れみりゃはゆっくちしちぇぇぇぇ!」 「お、肉まん。」ぱさり。 「うー!うー!」 といったところで目が覚めたおにーさん。 玉網を使ってあっさりとれみりゃを捕獲したのであった。 それにしても、生ゴミを処理して肥料を作り、 庭の管理までやってくれた挙句、夕食のおかずをおびき寄せてくれるとは、 つくづく使いでのあるコンポストだ。 つい今さっきまでたっぷり飯を食っていたこの肉まん、中身がが詰まっていてうまそうだな。 「ゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っ」 「おきゃーしゃん、ゆっくちしちぇぇぇぇ。」 ザックザックザック 薄っぺらくなった方のれいむには、中身を詰めなおしてやることにする。 掘り出したのは、「おといれ」とやらになみなみと貯められた餡子。 こいつを、中身の減ったれいむの口からねじ込んでやることにした。 「ゆ゛っ、ゆぼぉっ!おにーざん、やべでぇ、ゆっぐぢでぎなっ!ゆぼっ!」 「おにーしゃん、やめてあげちぇにぇ!おきゃーしゃんがいやがっちぇるよ。」 無視。餡子は餡子だ。多少土が混ざっているが、中に詰めなおしてやれば問題ないだろう。 「ゆ゛っ、ゆっぐぢしていってね。ゆげぇ。」 「やっちゃー!おきゃーしゃん、げんきになっちゃよ。」 「ゆ、ゆぅぅ・・・おにーさん、ありがとぉ・・・。」 「しゅーり、しゅーり、ちあわちぇー!」 ふむ、消耗してはいるが、まだ当分は使えそうだ。 そして、その夜は多すぎて食べきれなかった肉まんの残りを、コンポストに放り込んでやった。 やはり一人暮らしにあのサイズは無茶な話だな。 「ゆわーい。きょうはごちそうだにぇ!」 「ゆーん。きっといっしょにれみりゃをやっつけたから、ごほうびなんだよ。」 「ゆっくち!ゆっくち!」 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− そんな生活が、しばらく続いたが、 子れいむが成体にまで大きくなった頃、親れいむの方が死んだ。 あとで調べたが、町の野良の寿命は平均一年かどうかと、大分短いらしい。 我が家に来た時には中古のポンコツだったということか。 「お・・・おにーさん。おちびちゃんを、・・・これからもゆっくりさせてあげてね。」 「特になにも変らんよ。」 「おちびちゃん、・・・ゆっくりしていってね・・・・・・」 「おかーしゃん、おきゃあしゃぁぁぁあああん!!!すーりすーりしてね、ぺーろぺーろしてねぇぇえええ!!!」 リボンは子れいむの方が欲しがったのでくれてやり、死体のほうはぐちゃぐちゃにすり潰して肥料にした。 花壇の花も元気に育つことだろう。 「おかーさん。おはなさんになったんだね。」 「まあそうとも言えるな。」 「ゆっくりしていってね。おかーさん。」 まあ、そんなことはどうでも良かったのだが、少し問題が生じてきた。 コンポストの、生ごみ処理能力が落ちてしまったのだ。 「ゆぅぅ~。さびしいよぉ。」 「おちびちゃんがほしいよぉ。」 「すーりすーりしたいよぉ。」 どうも孤独な生活と発情期が重なって、ノイローゼ状態になったらしい。 頭数が減ったうえ、どうにも食欲が無い。庭の雑草もまた伸び始めてきた。 これは、新しいゆっくりを取ってくる必要がありそうだな。 その日、夕食の生ゴミをコンポストに放り込みながら、 れいむにつがいを探してやる、と言った時のれいむの喜びようは大変なものだった。 体が溶ける寸前まで水浴びをして、リボンのしわ一つ一つまで丹念にあんよでつぶして伸ばしていく。 コンポスト内の清掃も丹念に行い、 さらに子供が出来た後のために、花やイモ虫、果物の皮などのごちそうから保存食の干し草まで貯めこむ。 にんっしん中のベッドまで葉っぱと草を使って作り終えて、準備万端でその日を迎えた。 約束の日、私はれいむを連れて街を歩き、れいむ的に「すっごくゆっくりしてる」まりさを手に入れた。 この白黒饅頭、帽子にアイロンをかけた形跡もわずかにあり、恐らくバッジを引きちぎったのであろう傷痕も見られる。 飼われていたというなら、それなりの躾もされているのだろう。好都合だ。 「ゆふん!そんなにまりさをかいたかったら、かわせてやってもいいのぜ。」 「ゆっくり!まりさ、ずっとゆっくりしようね!」 「ゆん!なかなかゆっくりしたれいむだから、とくべつにすっきりしてやってもいいのぜ。」 本人も乗り気のようだから都合よい。つがいにしてやることにして、家に連れていった。 「ゆぅ~ん、まりさ。すーり、すーり。」 「ゆへぇぇ!いいからとっととまむまむをむけるのぜぇ!『ぼよぉぉおん!』」 「『ごろんっ』ゆぅ!?もっとゆっくりしてぇ!」 「しったこっちゃないのぜ!まりさのぺにぺにをおみまいしてやるのぜぇ!!」 ずぼぉっ!ずっぽずっぽずっぽずっぽ・・・ 「ゆぁーん、いだいぃぃぃい!らんぼうすぎるよぉ。もっと、ゆっぐりぃ!」 「ゆっふっ!ゆっゆっゆっゆっゆっゆっすっきりぃぃぃいいい!」 「ずっぎりぃぃ。」 とりあえずれいむの腹が膨れてきたので、予定どおりにいったようだ。 「ひどいよまりさ・・・」 「ゆふぅ。ひとしごとおわっておなかがすいたのぜ。にんげんさん、とっととごはんをもってくるんだぜ!」 「その辺のを適当に食え。」 「ゆゆ!?なにいってるのぜ。ゆっくりふーどさんなんて、どこにもないのぜ。」 「草があるだろ。」 「な・・・なにいってるのぜぇぇ!くささんはごはんじゃないのぜ! ふーどさんがないならけーきさんでもいいのぜ!はやくもってくるのぜ、くそじじぃ!」 「ゆぅ。なにいってるの?おにーさんにあやまってね。くささんはおいしいよ。むーしゃむーしゃ。」 「ゆぎぃぃぃいい!もういいのぜ!はやくおうちにいれるのぜ!べっどですーやすーやするのぜ!」 「そこに家ならあるだろ。」 「な・・・なにいってるのぜぇ!これはごみばこさんなのぜ!くさくてきたないのぜ!」 「ひ、ひどいよまりさ!おにーさんがれいむにくれた、ゆっくりできるおうちだよ! それに、れいむがいっしょうけんめいおそうじしたんだよ!ゆっくりあやまってね!」 「・・・いいよ別に。文句があるなら勝手に出ていけば。」 「ゆふん!まったく、ばかなじじぃとゆっくりしてないごみれいむのほうが、このおうちからでていくのぜ! ゆっくりしたまりささまが、とくべつにこのおうちをつかってやるのぜ!」 「ふーん・・・。れいむ、どうやら一緒に暮らすのは無理そうだが。」 「ゆぅぅぅぅ・・・ゆっくりできないまりさだよぉ。」 とりあえず、私が家から追い出されるのは嫌なので、ゆっくりしたまりささまとやらは、門から丁重に出て行ってもらった。 あれだけ態度がでかいと、野良をやっていくのも大変だろうに、大したものだ。 しかし、ゆっくりと言っても、コンポスト向きのとそうでないのがいるのかもしれない。 黒帽子がダメなのか、飼われていたのがダメなのか、まあ、どうでもいいことだ。 れいむの腹にいるちび共の中に黒帽子がいたら、それもはっきりするだろう。 つがいこそいなくなったものの、孤独を埋めるという当初の目的は達成されたようである。 それから数匹分の食欲を発揮し始めたれいむは、3週間後、無事れいむ種一匹とまりさ種一匹を出産した。 赤ゆっくりが腹から射出される勢いには驚いたが、庭は柔らかい芝生であったのが幸いしたのか、 せっかくれいむが作っていた草のクッションから1m以上離れて着地したものの、つぶれることはなかった。 「「ゆっくちしちぇっちぇにぇ!!!」」 「ゆっくりしていってね!ゆぅーん、ぺーろぺーろ、おちびちゃんたちかわいいよぉ。」 これで、コンポストの方は今後も安泰そうだ。 母れいむがチビ共にもバッジが欲しいとか言ってきたので、画鋲のカサの部分をセメダインでくっつけておく。金バッジだ。 これで満足して生ゴミを処理してくれるのだから、安上がりなものだ。 ちなみに、ゆっくりしたまりささまに出て行ってもらってから二日後、門の前にみすぼらしく、 帽子もかぶっていないまりさ種が一匹転がっていた。 「やっばりがっでぐだざぃぃ・・・おねがいじばずぅ。」 とか言っていたが、ゆっくりを飼う趣味などないので、無視しておいた。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− それからしばらくは、コンポストとしても庭の芝生管理としても特に問題はなかった。 ピンポン玉サイズの子供たちでは、成体一匹分の処理能力を補えるかと、多少不安ではあったが、 どうやら、成長中のチビ共の方が食欲は旺盛らしく、生ゴミは毎日順調に処理され、肥料になっていった。 黒帽子の方も特に文句を言わず、生ゴミをムシャムシャ食らい、庭をぽよんぽよんと跳ねまわっている。 やはりあの態度は、育ちが問題だったようだ。 だが、赤ゆっくり達が産まれてから一月ほどたち、そろそろ冬の近づきを肌で感じ始めた頃、 またしてもコンポストの性能が低下してきた。 朝、コンポストの中をのぞいてみると、まだ昨日の生ゴミが残っている。 さらにその奥では、歯をガチガチと鳴らしながら、目の下にクマをつくったれいむ一家がいた。 「お、おおお、おにーさん、おうちがさむいよぉぉぉ・・。ねむれないよぉぉ・・。」 「しゃむくてゆっくちできにゃいぃぃぃ。」 「ごはんしゃんつめちゃいよ。むーちゃ、むーちゃ、しょれなりー。」 コンポストはれいむ達なりにきっちり入口を塞いでいるが、やはり所詮はポリバケツ。 まだ昼間は温かいが、壁一枚隔てた向こうの、夜の寒気を完全に防ぐことはできないようだ。 この時期でこれでは、冬の間はコンポストの機能が完全に停止しかねない。 家に入れるという選択肢はもちろんないが、 本格的にコンポストの改造を行う必要がありそうだ。 その日の昼、れいむ一家に『たからもの』とか言う小石や押し花や、ガムの付いたリボンらしきゴミをコンポストから出させると、 大規模な改装に取り掛かった。 まずは、ポリバケツを掘り出して、横倒しにすると天井になる、壁の一部を四角く切り抜く。 それに、ちょうつがいと留め金をつけて、外から開けるようにした。 ゆっくりは、冬には巣の入り口を密閉するらしいので、生ゴミの投入口をつけてやったわけだ。 次にバケツの入口、つまりゆっくりの出入り口だが、せいぜい直径30cm程度のゆっくりに対しては大きすぎる。 壊れたすのこを材料にして、ドーナツ状の板をつくり、バケツの口に取り付けてやった。 これでゆっくりの出入り口は、必要最低限の大きさになり、 木の枝などで塞ぐ手間も、寒気の吹き込む隙間もぐっと減るはずだ。 あとは、再び縁側の下にポリバケツを埋めなおし、これまではむき出しだった側面にまで土をこんもりと盛っておく。 外から見ると、生ゴミの投入口と、ゆっくりの出入り口だけ穴のあいた、砂場の砂山のような外観となる。 縁側の下なので、雨風で盛り上げた土が崩れる心配は無い。 地下は冬でも暖かいというので、これで断熱は十分だろう。 数十分の作業中、庭で遊ばせていたれいむ一家を呼び寄せた時の反応は、 以前コンポストを、はじめてつくった時以上のものであった。 「ゆ、ゆ、ゆ、ゆわぁぁぁぁああい!すっごくゆっくりしたおうちだよぉぉおおお!」 「ゆっくち!ゆっくちー!れいみゅたち、こんなゆっくちしたおうちにしゅんでいいにょ!?」 「ゆわーい!なかもあっちゃかいよー!ゆっくちー!」 「ふーい、疲れた。あとはこいつでも中に敷いとけ。」 「ゆぅぅぅぅうう!しゅごーい!ゆっくちちたおふとんしゃんだー!」 「おにぃさん、ありがと、う、ゆぇぇぇええん!」 「おきゃーしゃん、ないちぇるにょ?どっかいちゃいにょ?ゆっくちしちぇにぇ。」 「おちびちゃぁぁあん!れいむはうれしくってないてるんだよぉ。ゆっくりー、ゆっくりー!」 近所の農家から頂いてきた干し藁をひと束くれてやっただけだが。 とりあえず、この反応からして、今後はまたコンポストとして元気にやってくれそうだ。 こちらはやることやったので、あとのメンテはこいつ等がかってにやってくれればいい。 かつて母れいむと一緒に野良生活を送っていた頃、れいむには夢があった。 温かくて、雨の心配も、風の恐怖も感じないですむおうち。 毎日お腹いっぱい食べられるだけのごはん。 しかも、そのごはんを手に入れるために、命の危険など感じずにすむゆっくりプレイス。 外敵の心配もないそのゆっくりプレイスで、 ゆっくりしたおちびちゃん達とすーりすーりしたり、のーびのーびしたり、 おうたをうたったり、水浴びですっきりーしながら、毎日ひたすらゆっくりする。 夜になったら、ゆっくりしたおうちに帰り、ふかふかのおふとんの中で、 家族で肌を寄せ合ってすーやすーやする。 たまにはあまあまが食べられたら言うことはない。 これが、れいむのかつて夢見たすべてであった。 そして、今、この場所には、れいむが望んだもの全てがあった。 全てのゆっくりが追い求め、そして見つけることの出来なかった場所、ゆっくりプレイス。 だが、れいむにとってのそれは、人間さんがコンポスト、と呼ぶこの場所に、確かに存在していたのだった。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 「ゆっくりー!」 「すーり、すーり、しあわせー。」 「すーり、すーり、・・・ゆっ、ゆっ、ゆっ」 「ゆふぅん、だめだよまりさぁ。ゆふぅ、ゆふぅーん!」 れいむ親子が初めて我が家のコンポストとなって2年。 結局外部から新たなゆっくりを連れてくる必要はなくなった。 こいつらは、家族以外のゆっくりがいないとなると、姉妹同士でつがいを作り続け、今はすでに4世代目である。 今はこれまた姉妹である、れいむとまりさのつがいがコンポストとして活躍している。 それと、最近は花壇の世話もめんどくさくなったので、街でゲッソリしていたゆうか種も一匹拾って庭に住まわせている。 最初はコンポストの連中が花を勝手に食う、食わないでもめた時期もあったが、 群れでもない以上大した量を食われることもなく、しかも花の肥料がコンポスト産だということもあり、 それなりの折り合いをつけることで落ち着いている。 「「すっきりー!」」 などと思っているところで、また増えるつもりのようだ。 れいむの頭ににょきにょきと生えたツタには赤れいむが3に赤まりさが2。 まあ、構わない。どうせ代替わりが激しいゆっくりである。 うっかり病死などしないうちに子供を作ってもらわなければ余計な手間だ。 それに増えすぎるようなら何個か潰して肥料にするだけ。 庭もすっかり華やかになって、もう幽霊屋敷の頃の面影は残っていない。 「おはよーございます。」 「ああ、農場の。おはよう。」 最近ついにこの辺も、のうかりん農場化が進み始めた。 生垣の向こうから挨拶してきたのうかりんも、そこの従業員である。 「とってもゆっくりした庭ですね。きれい。」 「まあ、ゆうかが一匹でやってるんだがね。」 「うふふ。それは失礼しました。でも、それ以上に・・・あなたの飼われているゆっくり達。」 「?」 「とってもゆっくりしてますね。今までたくさん飼いゆっくりを見ましたけど、一番ゆっくりしてますよ。」 「ふーん。そんなもんかね。」 同じゆっくりである、あののうかりんが言っているなら正しいのだろう。 よくわからんが、この2年間で一つだけ確信したことがある。 こいつらには、コンポストという仕事が向いている、ということだ。 リクのあったゴミ処理場ネタは今度また書きます。 それにしても自分のSS製作ペースがそれほど落ちたわけではないのに、 いつの間にか餡小話のそうとう下に追いやられてたり。 SS増加ペース早っ。 とりあえず、シリーズものについてはそろそろなんか書きます。 町れいむ、レイパー、計画中のペットショップシリーズ リクの消化もまだおわってないなぁ。 挿絵 by街中あき 挿絵 by??? 餡小話掲載作品 ふたば系ゆっくりいじめ 132 俺の嫁ゆっくり ふたば系ゆっくりいじめ 148 ここはみんなのおうち宣言 ふたば系ゆっくりいじめ 157 ぱちゅりおばさんの事件簿 ふたば系ゆっくりいじめ 249 Yの閃光 ふたば系ゆっくりいじめ 305 ゆっくりちるのの生態 ふたば系ゆっくりいじめ 333 銘菓湯栗饅頭 プラス本作品 『町れいむ一家の四季』シリーズ(ストーリー展開順・おまけについては何とも言えないけど) 春-1-1. ふたば系ゆっくりいじめ 161 春の恵みさんでゆっくりするよ 春-2-1. ふたば系ゆっくりいじめ 154 竜巻さんでゆっくりしようね 春-2-2. ふたば系ゆっくりいじめ 165 お姉さんのまりさ飼育日記(おまけ) 春-2-3. ふたば系ゆっくりいじめ 178 お姉さんとまりさのはじめてのおつかい(おまけのおまけ) 春-2-4. ふたば系ゆっくりいじめ 167 ちぇんの素晴らしきゆん生(おまけ) 春-2-5. ふたば系ゆっくりいじめ 206 町の赤ゆの生きる道 夏-1-1. ふたば系ゆっくりいじめ 137 真夏はゆっくりできるね 夏-1-2. ふたば系ゆっくりいじめ 139 ゆっくりのみるゆめ(おまけ) 夏-1-3. ふたば系ゆっくりいじめ 174 ぱちぇと学ぼう!ゆっくりライフ(おまけのおまけ) 夏-1-4. ふたば系ゆっくりいじめ 235 てんこのインモラルスタディ(おまけのおまけのおまけ) 夏-1-5. ふたば系ゆっくりいじめ 142 ゆうかりんのご奉仕授業(おまけ) 夏-2-1. ふたば系ゆっくりいじめ 146 雨さんはゆっくりしてるね 夏-2-2. ふたば系ゆっくりいじめ 205 末っ子れいむの帰還 秋-1. ふたば系ゆっくりいじめ 186 台風さんでゆっくりしたいよ 秋-2. ふたば系ゆっくりいじめ 271 都会の雨さんもゆっくりしてるね 翌年 ふたば系ゆっくりいじめ 224 レイパーズブレイド前篇(おまけ) D.Oの作品集 トップページに戻る このSSへの感想 ※他人が不快になる発言はゆっくりできないよ!よく考えて投稿してね! 感想 すべてのコメントを見る れいむが死んでるじゃねえか!(老衰でゆっくり大往生) -- 2017-12-22 22 36 05 増えすぎた結果お兄さんに赤ゆっくりを潰されてしまい、怒って家族で家出をするも環境についていけなくて しばらくして戻ってきたら別のゆっくりたちがコンポストとして生活してて結局野良ゆっくりとして生きる展開ありそう -- 2017-05-23 20 19 48 クソまりさの存在以外はぽかぽかや唐草模様は何何の実だ? -- 2016-09-01 18 41 18 心が洗われる作品でした、 短編集みたいで、 ゆっくり読めました。 -- 2015-01-15 12 01 21 なんといういい話・・・ぽかぽかする -- 2014-06-05 17 15 44 かんどー♪ -- 2014-05-30 19 48 40 謙虚なゆっくりれいむだったから生き残れたんだろうな。 必要以上の高望みをしなければいいということか。 -- 2014-03-27 13 29 47 あのまりさ(成体)はやっぱり生き残れなかったのかな(まあ、あんなゲスゆっくりなんてどうでもいいけどね!)。 -- 2013-07-29 12 24 18 ゴムゴムの実w -- 2013-07-06 03 16 12 ひさびさにいい話だ 環境にも優しいなんて…あー、コンポスト欲しくなってきた -- 2013-04-28 23 58 18 るーるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるr -- 2013-03-28 11 42 02 良い話だ、ゆっくりにも何かしらの利用価値があるんだなペット以外に -- 2013-01-19 13 13 05 ゆっくりできすぎててんごくいきそうだよ! -- 2012-10-13 21 44 04 ゆっくりできるいい話だ 唐草模様のゆっくりが悪魔の実に見えるwww -- 2012-09-12 18 24 08 あっさり死んでいった先代たちを通して読むと、感慨深いものがあるな。 いいよね。死の危険が少なくて。 -- 2012-08-19 21 38 21 家にある生態系の循環にゆっくりが組み込まれた 理想の形だなぁ、ご時勢に合ったエコだし。 さらに家庭菜園も被害なく出来たら完璧だな! 唐草レイムは・・・まぁなんだ、プププwwwwww -- 2012-08-11 02 35 24 ゆっくりできる話ですね。 でも、唐草模様きめぇww -- 2012-07-30 16 58 41 今までSSでみたゆっくりまともランキングTOP10には入る -- 2012-07-08 19 10 57 唐草模様きめぇwwwww -- 2012-05-22 09 04 25 高望みせずに、限られた環境で満足できるのも、生存競争には必要な能力だね。 ペットって結局どこまでいっても別の生き物なんだし完全にわかりあうことなんてできない。 だから必要な程度以上は干渉しない、構い過ぎないことが必須なんだと思う。 それはそうと最後の唐草模様きめぇ 噴いた(笑) -- 2012-04-10 21 17 44
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ゆっくりできるね ※初投稿となります、よろしくお願い致します。 ※ヤマもオチもございません ※ゆっくり亜種的なものが出ますのでご注意を …ネタが思い付かん。 締め切りが既に5日にも過ぎ「真・締め切り」も後少しにせまっていた。 なのに、一向にネタが浮かばん。あのへっぽこ担当がせっかくのシーンを総ボツにしたために、 結構な空白が出来てしまった。 「何が『先生ならもうワンステージ上のモノが出来ます』だ」 怒りにまかせて、灰皿に吸いがらを押し付ける。そして、次の煙草に手を出すため、 横に置いていたシガレットケースを取ろうとすると ―無かった。 ふと、横を見ると何かのアイテムを取ったかのようにシガレットケースを掲げ、寂しそうな笑みを浮かべている。 「おい」 声をかけるもそれは静かに首を振る。ここ最近居ついたゆっくりさなえ(おさとう式)だ。 「それを、よこせっ」 少し、声を荒げて膝を立てると、疾風のようにさなえはシガレットケースを掲げたまま、逃げた。 「待てっ」 足が絡まって転んだが、それでも追いかける。 あの煙草は結構高いし、中々手に入らない。それに今の俺にとってはあれがゆっくり出来るモノなのだから。 だが、普段の運動不足がたたってか、あっと言う間に息切れがする。 「ちくしょうが……」 縁側にうずまくると、弾んだ音が聞こえてきた。 「おじさん!」 昔から懐いている、ゆっくりれいむだ。俺の家の前にいた『先客』である。 まさか、引っ越してきた途端「ゆっくりしていってね!」と挨拶されるとは思わなかった。 別に害も無いので座敷わらしの一種だと思いこのまま同居している。 たまに、菓子を食いながらのんびりとした話をすると意外なアイディアも出る。 「さなえがはしっていったけど『ゆっくりできない』のおわった!?」 『ゆっくりできない』時間とは俺が締め切りに追われている時だ。さすがに、そんな時にはれいむの相手は出来ない。 仕事の事であれこれと話すのも面倒なので『ゆっくりできない時がある』という事で簡単にすませた。 れいむもその時は出来る限り俺に近づかないようにしている。 だが、ここ最近居付いたさなえは違う。俺が忙しい時でも入ってくる。 居眠りの際にはいつの間にか横でお茶を準備していた。しかも、旨い。 れいむともウマが合うようで、頭に乗せては散歩に出かけている。 「すまんが、まだだ」 「そっか……ざんねん」 ちょっと顔をうつむけるれいむ。だが、すぐに顔を上げて 「じゃ、ゆっくりできるのまってるよ。それまでおしごとしてくる」 「仕事、お前が?」 「『北東のニンジャ』のじっきょう!」 あれ、お前かい。あまりのカオスぶりにぶっとおしで見たぞ、俺。 「……みずにしごとしてください。おもにれいむとさなえのごはんのために」 オマエまで、蔑んだ冷たい目で見るんじゃねぇ。 そんな訳で、PCの前に座る。ご丁寧にもネットの回線は抜かれていた。 ため息をつきながらキーボードを叩く。 「これ以上、どこを変えろっていうんだよあのクソ担当が」 悪態をつきながらも、誤字の訂正や表現を変えてみる。 メインのシーンは最高の出来だと思うが、改めて見るとどこか独りよがりな気もしたのでちょっと視点を変えてみた。 自分でも推敲を重ね、何度も書き直しては消し、消しては書き直す。 トイレついでに、れいむの実況を見に行こうかと思ったが 汚い字で 『ゆっくりできてないひとは、はいらないでください』 と大きく書いてやがる。ちょっとだけ音が聞こえるが凄い早口で喋ってる。 アイツ、夢中になるとテンション変わるタイプなのか?どうせなら、アイツのノリをこっちに欲しいものだなと思う。 「ぬおおおおおおおおおおおおおおおおおお」 やたら、間の抜けた叫びが聞こえるのがやかましいので、自分の部屋に戻る。 うん、今度の間の抜けたキャラ作る時はあいつモデルにしよう。 ―数時間後、 「こんなモンか……な?」 自分でも、もう一回考え直したものを振り絞ってみたと思う。 少し、伸びをすると畳に背をあずけた。ここで、眠らずにさっさと編集部へ送らないと。 その前に回線を探さないとな。れいむかさなえか分らんが、どちらかが持っていっただろうし…… だがそれしても眠い。軽く仮眠を取るか。 手探りで枕を探し、手につかむ。疲れからなのか、やたら枕が重い。 眠ろう。そして、起きたらさっさと送って、あいつらに飯作ってやんないとな。 そう思っている内に、俺の意識は落ちた。 「さん…おじさん!」 「んあ?」 眠けまなこを空けると腹の上でれいむがポンポンと跳ねている。 「だいじょうぶ!?ゆっくりしんでない!?」 「勝手に殺すんじゃねぇよ」 起き上がってパソコンを見ると肌色の長い物体が何か打っている。 さなえだ。 「おい、何いじって…」 振りかえるとさなえはドヤ顔でPCのディスプレイに手を向ける。 そこには俺が書いた原稿が編集部宛に送られていた。 しかも、やたら折り目正しい文章で送られている。 これ、担当が見たら俺が送ったって思わないんじゃないかってぐらいに。 「さなえ、メールも打てたんだな」 「れいむがちょっとずつおしえたんだよ!」 ドヤ顔する二匹。 「おてがみのぶんはれいむがかんがえて、さなえがうったの。 あと、さなえはっさきまでおじさんのまくらだったんだよ」 あぁ、どうりで重いと思ったらオマエか。 「もっとほめてもいいんだよ!」 さらにドヤ顔になり顔(?)をそらすれいむとさなえ。 そのに呆れたのか俺は思わず苦笑が浮かんだ。 「あぁ、ありがとよ。さなえ、れいむ」 さなえは手をじたばたと動かす。 「『ごほうびにごはんはカレーがいいです!』だって!」 良く分かるな。まぁ、手伝ってくれたのは確かだしな 「そだな……今日ぐらいはいいだろう。いつもの甘口だな」 「れいむはこのまえ、えらいひとがもってきたマンゴーもたべたい!」 「わぁったよ。ただしあんまり食いすぎるんじゃねぇぞ」 「ゆっ!」 れいむはひと鳴きするとさなえの頭に乗った。さなえが戸を開けると歌いながら歩いていく。 さなえの頭でくるっとれいむは回ると 「おじさん!」 「ん?」 俺の顔を見て満面の笑みを浮かべると 「おつかれさま!いますごく、ゆっくりできてるね、もっとゆっくりしていってね!!」 れいむは元気な声を俺にかけてくれる。 「……あいよ」 今日のご飯は旨いだろう。そして、ちょっと甘いの多めに出してやるか そんな事を考えながら、俺達は台所へ向かった。 翌日、担当からOKの返事が来た。 だが、ついでに 『蛇足ではありますが、あのメールの文章は先生が書かれたのでしょうか? いつもの先生らしくなく、まるで女性が書かれたような印象を受けました。 今度の別作品であの雰囲気で書かれてはどうかと思います』 という返事が帰って来た。 ふと、ゲームに夢中になる二匹を見やり、『ゴーストライター』という単語が頭によぎったが、 ゆっくりに負けるわけにはいかんと思い、必死にれいむ作、さなえ著のメールを読む俺がいた。 以上です、お粗末様でした。 仕事が終わった後はゆっくりできるね! しかし実況ってプロが居るのかw -- 名無しさん (2012-08-20 07 10 20) ノーマルとおさとうの違いはあってもゆっくりしてほしいと思う心はひとつですね。 久しぶりの新人さんですね。これからもゆっくり投稿していってね! -- 名無しさん (2012-10-03 14 46 02) 名前 コメント
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ゆっくりパンツ 俺はマンションでゆっくりまりさを一匹飼っている。 といっても、ほとんど放し飼いのようなものなのだが… そんなわけで、まりさが「ゆっ!ゆっ~」 などと言っているようだが無視して、パソコンをはじめた。 その時、 「ピンポーン ピンポーン」 おっと、誰か来たのかな?っていうか2回鳴らすなよ 玄関に向かうとどうやら、宅急便が届いたようだ。 妙に軽い箱。 「ついにきたか!!」 それはヤフオクで落札した 「まこの染み付きパンティ」である。 わざわざ質問欄に3日は履いてくださいと書いただけあって 興奮がマッハだぜ! すごい速さで、いちもつを握り、パンティを頭にかぶった! 「おっおっ・・・・うっ・・・・うgぇぇぇぇっぇぇぇぇっぇぇ」 そのパンティはあまりにも臭かったのである。 小さいパンティのためなかなか頭から抜けず、匂いが頭に染み付いてしまった。 「ありえねぇ・・・」 すぐに、ヤフオクの落札者の取引ページを開き、 あまりにも臭すぎます!と書き、非常に悪いの評価をつけておいた。 せっかくのおちんちん高速しごきタイムが台無しになってしまった。 「ゆっ!?おにいさんなんだかくさいんだぜ!」 すっかり忘れていたまりさが何か言い出した。 全くうるさい奴だ。 そんなこんなで、今日は最悪な一日だった。 次の日、仕事もあるので、まりさ用のご飯を適当に置き出かけることにした。 さて、昼頃になり 「ゆっくりしていってね!」 まりさがゆっくりと目を覚ましたわけだが、おにいさんが見当たらない。 「暇だから、れいむの家に遊びにいくんだぜ!」 そう、このマンションにはベランダがあり、となりの部屋と繋がっているのである、 といってもゆっくりがぎりぎり通れる位のすきまがあるだけなのだが。 ゆっくりれいむがこの穴を通って、こっちの部屋に来たことから二人は仲良くなった ようである。 そのおかげか、ゆっくりれいむの飼い主のおねえさんとこのおにいさんもお友達に なっていた。 さて、ゆっくりまりさが穴を通り、隣のベランダに行くと、戸は開けっ放しのようだ。 ゆっくりまりさは機用にその戸をあけ 「ゆっくりしていってね!」 「ゆっくりしていってね!」 ちょうど、おねえさんもいないらしく、ゆっくりれいむも暇していたようだ。 しばらく時間がたち、そろそろ戻ろうかと思った時に昨日の事を思い出した。 「おにいさんはくさいぱんてぃをかぶるのがすきなんだぜ!」 「ゆっ?ぱんてぃって頭にかぶるものなの!?」 「きっとそうなんだぜ!なんだかやふおくってところで買ってたんだぜじぇ~け~のとかいってたぜ!」 「ゆっゆっ!?れいむもおねえさんにおねだりしてみるよ!」 「そうするといいんだぜ!でもくさいのはいやだぜ!」 「そうだね!きれいなぱんてぃがほしいよ!」 「じゃ!またくるんだぜ!」 といい、ゆっくりまりさはおにいさんの部屋へと戻っていった。 おにいさんはというと、仕事の帰りに、たまたまおねえさんと会ったらしく 楽しそうに話しながらマンションへと帰ってきていた。 軽く挨拶をしてそれぞれの部屋へと入っていった。 「ただいま~」 「おかえりなんだぜ!」 「おぉ~まりさ、ゆっくりしてたか?」 「まりさはゆっくりしてるんだぜ!れいむとあそんできたんだぜ!」 などといういつも通りの会話をしている。 おねえさんの方はというと・・・ 「ただいま~れいむ~おいしいスイーツかってきたわよ!」 「ゆっ!おねえさんおかえりなさい!」 そこには、頭におねえさんのぱんてぃをかぶったゆっくりれいむがいた。 「ちょっとれいむ!何してるの!?」 「ゆっ!?まりさが教えてくれたんだよ。」 「まったく・・何おしえてるんだか・・・」 おねえさんはあきれ気味だった。 「おねえさんのぱんてぃがきれいでよかったよ!くさかったらゆっくりできないよ!」 「え?くさい?ぱんてぃ?何のことれいむ?」 「まりさのおにいさんはくさいぱんてぃを頭にかぶってるっていってたよ!じぇ~け~のみたいだよ!」 おねえさんは絶句した・・・ その頃、隣のお兄さんは違うじぇ~け~のパンティを頭にかぶり裸で踊っていた。 さて、次の日、お兄さんが仕事に出かけるために、玄関のドアを開けると、 ちょうど隣のおねえさんも仕事なのかドアを閉める所だった。 「おはようござます!昨日買ったスイーツおいしかったですよ!」 元気よくおねえさんに話しかける俺 「あっ、・・・・どうも・・・」 なんか元気のないおねえさん なんかあったのかなと思ったが、遅刻ぎりぎりだったので、あいさつをすませ すぐに駅へむかって走ってしまった。 おねえさんはというと、マンションのスイーツ族(笑)とのお茶会にでかけてのである。 そこで話される話題は何かといえば、 それはもちろん 変態が隣の部屋にいるという話題なわけで・・・ 「・・・・なんですよ!」 「え~~きもーーいいい!!!」 「いいひとだとおもってたのに・・・」 さていったん話が漏れれば、広がるのは一瞬、 おにいさんが帰ってくるまでには、収集がつかなくなっていた。 何も知らないおにいさんはというと、隣のおねえさんをげんきづけるために ケーキを買ってマンションに向かっていた。 「ん?なんか騒がしいな、何かあったのかな?」 急いでマンションの自分の階に行くと、 自分の部屋の前にマンションの住人が集まっていた。 「え~とみなさんどうしたんですか?」 なんだか、皆が俺を睨んでいる。 まさか、うちのまりさがなんかしたのかなとも思ったが、 一人の女性が声をあげた 「この変態やろう!!」 なぜか、俺の家のドアの前にぱんてぃが沢山置いてあった。 正直、何が起こっているのかわからなかった、 そして、おねえさんはなんだか泣いていた。 おれは、何がなんだかわからなくなり、住人を押しのけて、自分の部屋 に入り鍵をかけた。 「ドン!ドン!! あけなさい!!!」 そんな罵声が聞こえてくるが、無視するしかない。 なんで外にぱんてぃがあるのかまったく理解ができなかった、 がしかし、次の瞬間に犯人が現れた。 「ゆっ!ゆっ!くさいぱんてぃ運びすぎてくさいんだぜ!おにいさんにおふろにいれてもらうんだぜ!」 などといって、ゆっくりまりさがベランダから戻ってきた。 そう、おねえさんがれいむにぱんてぃをもってくるように、まりさにたのむように言ったのである。 最初は、くさいからいやなんだぜ!といっていたまりさもれいむがしつこく頼むので しかたなく持っていったようだ。 「おっ~まりさ お か え り」 「おにいさん!まりさはお風呂にはいりたんだぜ!」 「ほぅ その前に今日はまりさにプレゼントがあるよ」 「ゆっ!はやくぷれぜんとをだすんだぜ!」 すぐに、あまりの臭さに違う所にしまっていた、まこのぱんてぃを取り出し、 まりさの足からから履かせた。 「ゆっ!うげぇぇぇぇくさいんだぜ!はやくぬがせるんだぜ!」 まりさは必死に転がったりしながら、ぱんてぃを外そうとするが、 ちいさくておにいさんの頭からすらなかなか抜けなかったぱんてぃが そんな事で外れるわけもなく・・・ 「ゆぇぇぇっぇぇぇぇっぇぇぇぇぇぇぇ!!」 わめきちらしながら、転がり、さらには餡子を吐こうとするが、パンティの壁 に阻まれて、吐く事すら出来ない そのまりさを、持ち上げて、ベランダへと一緒に出た。 そして、ベランダから投げ捨てた。 「ゆっーーーーーーーーだずげろーーーげろーーー」 ここは10階だから、多分生きてははいないだろう。 何となく、下のほうで音がするのが聞こえた。 さて、次は俺の番か… おわり。 このSSに感想を付ける
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■ゆっくりボールのあそびかた なんとなく暇だったので外をぶらぶら歩いていたら一匹のゆっくりが居た。 ちょっと小ぶりだな……まだまだ遊び盛りの子れいむかな? 「ゆっくりしていってね!!」 「はいはい、ゆっくりね~」 適当に返事を返したその時、俺の脳裏に電流走る……ッ!! 「おーい、ゆっくりー」 「ゆゆ?れいむはゆっくりじゃなくてれいむだよ?」 「お前で遊ぶわ」 そう言いながら片手でれいむのおさげを掴んで吊るし、家まで連れて帰ることにした。 「かみのけをひっぱるとゆっくりできないよ!!ゆっくりやめてね!!」だの 「ゆっくりはこんでね!!いそいではこばれるとゆっくりできないよ!!」だのと 微妙なニヤケ顔で文句を言っていたが、家に帰って居間に置くと 「ゆわ~、とてもゆっくりしたおうちだね!!おじさんはゆっくりできるひとなんだね!!」 「ゆっゆ~♪ゆっくりいっしょにあそぼうね!!ゆっくりんぼであそぶ!?それともゆっくりぽん!?」 などと、とても嬉しそうにはしゃいでいた。 俺は押入れから工具箱を取り出し、その中の目的の物を探しながら 「おー、ゆっくり待っててくれよー。今遊んでやるからな~」 「ゆっくりまってるよ!!ゆっくりじゅんびしてね!!」 などと他愛の無い会話をしつつ、道具の準備をした。 「じゃあゆっくり、ちょっと目を閉じてじっとしててな~」 「おめめをぎゅー、だね!!ゆっくりりかいしたよ!!」 思いっきり目を閉じたれいむの目の上から、ガムテープの端をペタリと貼る。 「ゆゅん!!ひんやり~♪」 「おお、そーかそーか。んじゃじっとしててくれよ~」 いきなり拒絶される事は無かったようだ。 そのままガムテープでグルグルをれいむの全身を巻いていく。 髪はなるべくデコボコにならないように、もみあげやおさげも軽くバラして…っと。 リボンと口は最後の仕上げにまだ巻かないで…… 「ゆっふっふ~、おにいさんくすぐったいよ!!」 「ゆっくりひんやりしてるよ!!とってもゆっくりできるね!!」 何やらご満悦な様子なのでそーっと床に置く。 今のれいむの姿はガムテープでぐるぐる巻きにされた茶色い球体そのものだ。 口の所が大きく開き、頭のリボンがわずかな隙間からぴょこんと飛び出している。 底の部分もガムテープで巻かれて補強されている為、まだ俺が持ち上げていると思っているのか 「うわぁ~、おそらをとんでるみたい!!」 「れいむ、ゆっくりふわふわするよ~ゆらゆら~」 などと楽しそうだ。 じゃあ、そろそろ本番に入るか。れいむを部屋の端から端まで転がしてみるとしよう。 「そーれ、こっちからごろごろー」 「ゆっ!?ゆっ!?ゆっ!?お、おにいさん!!なんだかぐるぐるするよ!!」 「ほーら、あっちからごーろごろー」 「ぐるぐるするよ!!せかいがまわるよ!!れいむ、おほしさまになったみみみみたたたたいいいい!!」 おー、段々加速する度に反応が微妙に変わっていくな~ よし、じゃあ今度は急停止、と。 「ゆぎゅえ!!いまぐわんってした!!ぎゅるんって!!ゆえっぷ」 「ゆえぇ……しゅっごいぎゅるぎゅるしゅるよ……ゆっぎゅりゆえぇ……」 いきなり回転を止められた事で中身の餡子がズルッと滑ったらしい。 呂律の回らない口調で苦痛を訴えるものの、伴った吐き気のせいでままならないようだ。 とりあえずれいむが落ち着くのを待ってから庭に運び、今度は上に投げてそーっと受け止めてみる。 「そーら、たかいたかーい」 「ゆゆっ!!からだがまんぷくだよ!!ずっしりー!!」 「ほーら、ひくいひくーい」 「ゆぅ~ん、ゆっくりふ~わふわ~!!」 ご満悦のようだ。それじゃ、徐々に高く、更に高く。天まで届けー!! 「うおおおおお!!貫けええええええええええ!!!」 「ゆっっびゅうううう!!からださんがゆっくりしすぎだよおおおおおお!!!!」 ヒュウウウウウウウウウウウウ…… あ、落ちてきた。 「ふわああ~、ヘブンじょうたい~。とってもゆっくりしたきもちだよー」 「あー、無重力だしね。よっと……」 ベチィッ!! 「ぴぎゅるっ!!」 あ、しくじった。 「ゆっぱあああ!!ぱぴぷぺぽおおおおお!!」 ブピュッ!ブババババ!!ベチャベチャベチャッ!!エレエレエレ…… 落下時の圧量で餡子が口から垂直に吹き上げられた。 まるでスイーツの間欠泉やー!! おっと、現実逃避してる場合じゃないな。 急いで巻き散らかされた餡子を綺麗なとこだけ回収して口の上に盛り、 緊急用の餡子パックの分も上乗せして、思いっきり腕を突っ込んで餡子を全部押し込んでから急いでガムテープで封をした。 餡子こそ戻したものの、ビクビクと痙攣する様は痛々しい。 「ゆぶっ!!ゆびゅっ!!ごくん、ゆびゅる!!ゆびゅっ!!」 「ゆばぁ!!ゆべぇ!!ごくり、ゆぶぇっ!!ゆぎゅっ!!」 あー、口塞いだから吐いてるけど吐ききれずに圧力で飲み込んでるのか。 餡子が流出こそしないから死にはしないだろうけど……こりゃ地獄の苦しみだろうなぁ。 口の上辺りのガムテープの隙間から砂糖水ダラダラ流れてるし。ビクンビクン痙攣してまるでマッサージ機みたいだ。 なんとなく誘惑に負けた俺の取った行動は…… 「よっこらしょっと」 「ゆびゅぶきゅるびゅっくん!!ごぶぁっ!!ゆぎゅるぐぱぁっ!!」 ブブブブブブブブブブブブ…… おー、凄まじい振動が腰に~。ダイエットに最適だなー。 振動が徐々にゆっくりに……って大丈夫か?これ? 「ゆばっ……がばっ……ごびゅんっ……ごくっ……」 「…………………………………………………げぷっ」 うん、振動止まっちゃったな。口元のガムテープを剥がしてっと。 いくらかの餡子がまだ残っていたものの、噴出現象は止まってるな。よかったよかった。 ぺちんぺちん。ぺちんぺちん。 「おーい、ゆっくりー。いきてるか~?」 「ゆっ……ゆっくり……ゆっくりさせてね……」 「返事が出来るって事は大分落ち着いたな、これなら助かるかもしれないぞ」 「お、おにいさんたすけてくれてありがとね……もうすこしでゆっくりしすぎるところだったよ……」 「そーかそーか、それじゃ落ち着いたら仲間の所に返してやろうな~」 とりあえずは大丈夫なようだ。様子が落ち着くまでゆっくり待つとしよう。 「ゆぅ……?ゆっ?ゆゆっ!?おにいさん!!たいへんだよ!!まえがみえないよ!!はやくあかりをつけてね!!」 「それにうごけないよ!!あしさん、ゆっくりしてないではたらいてね!!うごいてよぉおお!!」 ああ、今頃になって拘束されてる事に気付いたのか。気付くの遅すぎだろ……さすがゆっくり。 「よーし元気になったなー、それじゃ帰ろうか~」 「お、おにいさん!!おめめもあんよもおかしいよ!!ゆっくりたすけ 「はーい、ちゃんとキレイキレイしましょうねー」 「んー!!んーんー!!んんんー!!!」 口と飾りも完全にガムテープで塞いでっと。んじゃお帰りになってもらいますかね。 お、いいところにゆっくりが二匹居るな。大き目のれいむとまりさ……夫婦かな? 「やあ、ゆっくりしていってね!!」 「「ゆっくりしていってね!!」って」 「おにいさん、ゆっくりしてるばあいじゃないんだぜ!!まりさとれいむのこどもがいなくなっちゃったんだぜ!!」 「もうおやつのじかんなのにかえってこないよ……おにいさん、このへんでゆっくりしたこどものれいむをみなかった?」 「いーや、見てないよ。そっかー、君達には子供が居るのか~」 「とてもゆっくりしたじまんのこどもなんだぜ!!きっとおにいさんもきにいるとおもうんだぜ!!」 「れいむとまりさのこどもだもん、ゆっくりしてるのはとうぜんだよぉ~!!」 「そーかそーか、お兄さんは子供探しには協力して上げられないけど変わりにいいものをあげよう」 「ゆっ?なんなんだぜ?」 「ほーら、ボールだよ。子供が居るなら玩具にするといい。よくはずむよー」 「ゆゆっ!!とてもゆっくりできるおもちゃなんだぜ!!こどもたちもよろこぶんだぜ!!」 「ほら、帽子の中に入れておいてあげるよ。これなら落とさないだろう?」 「ありがとうなんだぜ!!それじゃおにいさん、ゆっくりしていってね!!」 「いろいろとありがとうね!!ゆっくりしていってね!!」 「気にしなくていいよ、じゃあねー」 ふぅ、これであの子ゆっくりも両親の所に帰れるだろう。 今日はよく遊んだ充実した日だったな、めでたしめでたし。
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ゆっくり1 8KB 制裁 自業自得 同族殺し 共食い ツガイ 飼いゆ 野良ゆ 赤子・子供 ゲス 都会 現代 虐待人間 初投稿です、どうぞよろしくお願いします。 僕らはにわかホームレス 「まりさ…」 「おにいさん…」 俺たち二人、いや俺と一匹はそうお互いに呼びかけた後は。言葉もなくその場に呆然と立ちつくした。 「ゆっ… ゆっくりできないよ」 そうしてまた俺とまりさ、いうまでもなくゆっくりまりさはおなじように呟いた。 なにしろ旅行から帰ったらアパートが全焼していたのだ。文字通りきれいさっぱり跡形もない、全焼優勝…なんちゃって… 「冗談いってるばあいじゃないよ、お兄さん…」 「…すまん…」 もちろん真っ先にアパートを管理している不動産屋に走った、そしてそこでこの世の過酷な現実をさらに思い知った、旅行に出た1週間前通りかかったときは営業していた不動産屋は倒産していた。 近所の八百屋に訊いたところでは夜逃げ同然だったらしい。しかもその後人相の悪い鬼意惨やおじさん数人が黒塗りの大型セダンで現れて一騒ぎあったらしい。 一つだけ判ることはこれで敷金の返還や火事の保証を受け取ることは絶望だということだ。 数少ない友人に電話をかけたがこういうときに限ってどいつもこいつも留守、仕方がなく留守電にメッセージを残し電話を切った。バッテリーが心配だからだ。 途方に暮れて公園のベンチに座り込む俺とまりさ。 こうして俺とゆっくりまりさはホームレスになってしまった。 「まりさ…一つだけはっきりしていることがある」 「ゆ… なに、おにいさん」 「今日から俺たちはホームレスだ、野良人間と野良ゆっくりだ!」 「ゆゆー、ほーむれすさんはゆっくりできないー」 「しかし旅行で金は使い果たした、スーツケースに着替えが入っているのがまだしもだが…洗濯してないけど…」 おれはそうごちるとコートのポケットをごそごそ探る、売店で買った食いかけの天津甘ゆっくりの袋が出てきた。 「喰えよまりさ…最後の晩餐だ…」 「むーしゃむーしゃ、先行きふあんていー」 甘栗を食べつつまりさと俺で呆然としていたらもう夕闇が迫ってきた、冬の夕暮れは早くそして無慈悲なほど寒い。 むかし酔っぱらってベンチで寝ていたら夜中に凍死寸前で目が覚めた経験がある俺は「とりあえず今日の寝床を何とかしよう!おい、まりさ…あれ?」といいながら隣を見るとそこにちょこんと座って甘栗を複雑な表情で食っていたまりさがいない。 「ゆっくりにまで見放されてしまった…」 心底情けないと我ながらそう思う声で呟くと視界の片隅、公園の入り口から逃げたと思ったまりさがこちらに向かって来るのが見えた。いつもの元気にはねる様子とは違い這い進んできた。そして何かを引きずっている。 「まりさ!」 俺は立ち上がるとまりさに駆け寄った。 「ゆっおにいさん!おうちさんをもってきたよ!」 まりさが引きずってきたのはダンボール、ずいぶんむかしこいつが野良だったときのことを思い出したのか。 今日から宿無しときいてまりさは真っ先にすみかの材料を探しに行ったのだった。なんだか俺なんかよりずっと生活力あるな、こいつ。 「どっからもってきたんだ、これ」 「ゆっ、まだあっちにたくさんあったよ」 俺の問いかけにまりさは目線で場所を示した。果たして公園の脇にある歩道にダンボールが幾枚か積んである、ゴミ捨て場ではないところを見ると不法投棄らしい、だがいまは社会のモラルの低下を嘆いている場合ではない。 「うーさみーいい、北風が強くなってきたなあ…」 「はやくおうちさんをつくってゆっくりしようよ」 俺とまりさは震えながら頷きあいダンボールを持てるだけもって、まりさを小脇に抱えるとそのまま公園の奥に小走りに進んだ、もちろんスーツケースも回収して。 この公園は結構広く奥の方は雑木林然とした様子になっていた。その一角なるべく人目に付かないところに立木を利用してダンボール組んで即席のおうちが完成した。広げたスーツケースを支えに大きめの箱状にダンボール立てかけただけだが… 「ゆゆ、ゆっくりできるね」 まりさは嬉しそうに床にあたるダンボールにひいた俺の着替えの上ではねている、適応力の強い奴だ。携帯電話の天気予報ではここ数日は雨が降らないらしいからとりあえずはこれで大丈夫だろう。 俺はといえばコートの下に新聞紙を突っ込んで保温効果もアップした。 明日夜が明けたらもう一度なんとか知り合いに連絡を取って金を借りるなりしよう、さすがに公園で永遠に暮らすわけにも行かない。と、いうかヤダ。 「はら減ったなあ…」 ぼそっとそう呟くと俺の洗濯前のシャツに器用にくるまったまりさがこっちをみていた。 「まりさ…すまんな…だめな飼い主で…」 「ゆゆ、まりさおにーさんといられればへーきだよ、明日朝さんがきたらまりさ狩りにいくよ!」 そういって微笑むまりさ、どこまでもポジティブな奴、でも俺は虫とか喰えないからなあ、まあ朝になったら俺も狩り…じゃなかった、金策と職探に奔走しよう。アパート件ももう一度相談できそうなところに聞きに行かないと。 そう思い横になっていると、眠気が俺とまりさの上におりかかってきた。 その時、外から「ゆゆ!ここにゆっくりぷれいすがあるよ!」「ここをまりさとれいむのゆっくりぷれいすにするんだぜ!」と、耳障りな声が聞こえた。 俺が起き上がるよりはやくまりさが外に飛び出していく、するとまたあの耳障りな大声。 「ゆゆっ!きたないまりさが出てきたよ!」 「ここはまりさとれいむのおうちにするんだぜ、きたないまりさはさっさと死んでね」 「ちんでね、ちんでね」 ああ、どうやらお約束のまりさとれいむのつがいらしい、そしてどうも子供も一緒のようだ。 俺はわざと姿を見せずに成り行きを伺うことにした、果たして外からは「れいむのまりさは強いんだよ!まりさのぷくーをみてこわくてしんでもしらないよ!」とれいむ種特有のキンキン声でわめいている。 「ちんでね、ちんでね」と、頭の悪そうな子ゆっくりの声がそれに追従した。 「ゆふふ、こわくてこえもでないんだぜ、このまりさ、まりさ様のぷくーをくらうといいんだぜ」 どうやらつがいの馬鹿饅頭はあの滑稽以外の何者でもないゆっくり特有の威嚇行動をしているらしい、その証拠に「まりさのぷくーはいつみてもはくりょくあるね!きたないまりさは何にもいえないよ、くずまりさだね、ゲラゲラ」「くじゅーくじゅー」と、やかましい。 その時。俺の飼いゆっくりのまりさは対峙している相手の威嚇行動をじっと見ていた、その顔にはおびえの色は一欠片もない、そしてにこりと微笑むと「鬼意惨、まりさ今夜はほんきだしていいよね!」と姿を見せない俺に叫ぶ。 「ああいいぞ!承認する!」 「ひゃっはー」 「ひゃっはー」 外のまりさとダンボールハウスの中の俺は同時に雄叫びを上げるとお約束の言葉を叫んだ。 『ゲスゆっくりはせいさいだあああ!』 その声を聞きつけた親まりさがため込んだ空気を一気にはき出し叫んだ。 「どぼじてにんげんさんがいるのおおお!」 「ゆ、ゆっくりできないいい!」 「ゆんやああ、きょわいよー!」 人間の声を聴いたとたんそれまでの威勢は何処へやら、親まりさはみるみるしぼみ親れいむは子ゆっくりに「おちびちゃん!ゆっくりしないでゆっくりにげるよ!」と頭の悪いことを叫び、こゆっくりは「ゆっきゅりりかいしちゃよ」と、これもまた馬鹿丸出しの返事を叫んでいた。 俺はといえば片肘突いてダンボールハウスの中で横になったままだ、俺のまりさならこのていどの馬鹿家族など敵ではない、なにしろこの俺、元虐待鬼意惨が自ら仕込んだ攻撃型まりさなんだから。 「ゆぎゃーあああ!」 真っ先に逃げ出した親れいむに通常のゆっくりの三倍のスピードで迫った俺の魔理沙は、ピコピコ動く目障りなお下げをくわえると、そのまま振り回して立木にクリーンヒットさせた。 「ぶぎゃっ!」 無様な声を上げて餡子を吐きつつ地面にたたきつけられて痙攣するれいむ、弱い弱すぎる。十饅酷饅頭。 「おのれー!よくもれいむをーおお!」 つがいを攻撃されて怒り狂い果敢に突っ込んでくる親まりさ、だが俺の魔理沙はそれを「ゆゆ、当たらなければどうということはないよ」と、呟いてひらりと交わし体を捻りざま被っているお帽子をフワリと投げた。 「ゆゆ、きゅらいよー、みゃみゃー」 もそもそと逃げようよしていた子れいむにそのお帽子が被さった。 いきなり視界を遮られパニックを起こし泣き叫ぶ。しかしみゃみゃー(苦笑)はあんよを空に向けて絶賛気絶中だ。 「ゆゆっ!おちびちゃん!ゆっくりたすけるよ!」 親まりさが俺の魔理沙の投げた帽子に駆け寄ったそのとき、横から立ちふさがった俺のまりさがジャンプ一閃、カウンター気味の体当たりを喰らわせた。 「ゆぎゃあああ!」 悲鳴を上げて地面にたたきつけられた親まりさ。何とか力を振り絞り震えながら起き上がろうとしたとき「ぶぎゃあっ!」と断末魔が響く。 俺のまりさがしかけた脳天からのボディプレスで親まりさのあんよが爆発したようにはじけ餡子が底面から飛び散った。 そして素早く押しつぶした親まりさの上から飛び退ると華麗に着地した。 「ふう、ぜんぜんはりあいがないよ」 息一つ乱さずまりさはそういうと。ダンボールハウスの中からはい出してきた俺の気配に気づき振り返ってにっこり笑った。 月明かりに照らされたまりさに俺も笑顔を返す。 「ゆゆっ…」 「みゃみゃーぴゃぴゃー!だちてねだちてね」 呻いている親ゆっくりと泣き叫んでいるお帽子の中の子れいむ、俺がその様子を見渡していると、お帽子を回収して、「ゆゆ、まりさはおうちに戻るよ」といい跳ねていくまりさ。 「さて…」 ダンボールハウスの中にまりさが入っていくのを見届けると「こればかりはあいつも慣れないからな」とつぶやき「フヒヒ、思わぬお夜食さんができましたよ」と、両手をこすりながら瀕死の親まりさと親れいむ、そして恐怖で「こにゃいでね、こにゃいでね、ゆんやああ」と泣き叫ぶ子れいむに近づいていく。 新聞紙の上にてんこ盛りになった餡子をパク突くまりさと俺、同族食いはゆっくりできないまりさだが目の前にあるのはすでに解体済みのただの餡子だ。もう何も無問題だ。 「むーしゃむーしゃしあわせー」 「うん、結構いけるな、やっぱり精神的にも肉体的にも疲れた時は甘い物だな、今夜はともかくこいつを喰って寝よう、俺も明日は朝から走り回らなきゃならんからな」 「ゆっくりりかいしたよ!」 ミカン大の子れいむはというと、輪ゴムでぎちぎちに縛られてコートのポケットの中だ。目の前で親を解体された子れいむは、朝が来る頃には恐怖とストレスででさらに美味しくなって朝食の代わりをしてくれるだろう。 満腹したにわかホームレスの俺とまりさはいつの間にか寝てしまった。 空には月が「ゆっくりしていってね」とばかり煌々と輝いていた。 終わり トップページに戻る このSSへの感想 ※他人が不快になる発言はゆっくりできないよ!よく考えて投稿してね! 感想 すべてのコメントを見る 良い飼いゆっくりじゃないか。ほのぼのしてゆっくりできたよー -- 2010-10-26 22 08 42 脱字の多さが気になった -- 2010-08-26 19 44 44 ほのぼの -- 2010-08-18 23 34 39 輪ゴムで縛るってのも虐待に応用できそうだな -- 2010-07-28 23 31 10 いいね -- 2010-06-12 00 00 24 ダンボールハウスって子供の頃に作ってとてもゆっくりできたよね! -- 2010-06-02 11 30 02
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※以下、お食事中の人は注意して欲しい。好き嫌いが分かれるので、一般の食材と一緒にしないで欲しいことと、実物を見たことが無い人は、検索して実物を見るのを推奨。 やあ。俺は、普通の鬼意山の1人です。今日は、幻想境の外れでオープンした俺の屋台について話そうと思う。俺は、昔…外の世界で見たある食べ物が頭からこびりついて離れないんだ。おぞましい…つーーーんと鼻に付く臭い、屋台の前を通ろうものなら…100メートル先からでも確認できる…そんな食べ物だ。 形は普通は四角く、色は茶色かったり、黒かったり…様々だが、何個かを串に刺して揚げてから辛いソースや辛い味噌なんかの調味料を付けてとにかく味を誤魔化して食べる。 一般にはゲテモノ扱いされるところだが、とある…大陸では…老若男女問わず人気のあるファーストフードらしい。聞いたことあるだろうか?名を「臭豆腐」という。 名は体を表すと言うが、そりゃあもう…目の前で見ているだけでも肉の腐ったような臭いが辺りに充満して、口に含むなんて考えただけでおぞましい一品で、…揚げてあるのが幸いしてか…辛うじて味覚障害のある奴らに食われているだけのような気がする。 事実…俺は某所の屋台の10メートル先で鼻をつまみながら一目散に逃げたね。 おっと脱線してしまった。そんな臭い豆腐だが、いざ作るとなればコストが安くて儲かるとあって、俺も作り方を屋台のおっさんにいくつか伝授してもらったので、「臭豆腐屋」をはじめる事にしたんだ。 さて、1週間前から仕込みをした甲斐もあり、なかなか自分的には良くできたと思う。桶の中の臭豆腐が、黒々として良い具合に異臭を放ってるぞ?!そろそろ太陽も真上に上がって、ちょうどメシ時になったから屋台をオープンさせようかな……とと……、忘れてた。笛でも吹いて、呼び込みをするか…。 ぷおーーーーーーーぷおーーーーーー…臭豆腐…はいらんかね〜!! 案の定、あんまり人は来ないなあ…。俺は鼻栓をしているから無事だが、この臭いに惹かれてくるなんて、金バエならともかく普通の人間ではないだろうな。しかし…ここで俺の脳裏には閃くものがあった!!…もしや?あいつらなら……!仕方ない最後の手段だ ぷおーーーーーー…ゆっくり臭豆腐を食べていってね〜!!! 俺の期待通りの事は起こった。ガサガサッと茂みが動いたかと思うと、丸い玉のようなものがコロコロと転がって来たのだった。そこには、50cmはあるかという大きなゆっくり饅頭がゆっくりとした表情でいつもの言葉を返してきた。 「ゆっ☆ゆっくりたべるわよ☆…それをこっちによこしなさいよ…!」 涎をたらし、道を水浸しにしながら、紅魔館のサボり魔門番ことゆっくり美鈴が、小さなバットを頬にかかる三つ編みで振り回しながらゆっくりと近づいてくる!!!俺ぴーんち(?!) 「あああああああああ…たまんないいいい!☆」 左右に素振りしてるのが正直うざいと思う。俺は実のところ美鈴のバットなんて怖くもなんともないのだが、最大限の演技力を振り絞り怖がっているかのように振舞った。 「うわああ〜。こわいよ〜。…いくつ食うんだ?(棒)」 「ゆゆっ…そ…そうね。しゅーっ・どーっ・ふ!3こもらおうかしら☆…ゆぅ☆…ごまかしちゃだめよ…おおきいのにしてよ!☆」 ゆっくりは、頭が極端に悪い生き物なので、数も片手レベルしか数えられないと聞いた。3個も食うのかよ?この糞饅頭…と思いながらも、俺は平然と臭豆腐にかじりつく美鈴の馬鹿顔が見たくて、仕込み済みの臭豆腐に黒い謎の粉(笑)を振りかけ、黒いゲル状の臭豆腐液にたっぷりと浸してから、高温の油鍋にぶち込んだ。 じゅわあああああああああああ…… 擬音に騙された奴は残念です…美味しそう…な臭いなんてするわけなく、黒灰色の煙と弾ける泡が屋台を暗黒サウナのごとく覆っていった。やべ…これ、ゴーグルしてても眼に染みる(爆)。こんなの食う奴の気が知れない。まあ、目の前の饅頭は屋台の前で、精一杯ぴょんぴょんと跳ねて、油鍋を覗こうと一生懸命なんだが…。 「ゆ〜☆もうそろそろたべたいのよ〜☆おそい〜☆はやくしろ〜☆」 ゆっくり美鈴は緑色の人民帽を上下させながら、涎をあたりに振りまきつつ俺に命令してくる。ゆっくり饅頭はこれだから困る。数分なんだから、少しは我慢して見ていられないのか??俺の串を持つ手が無意識に怒りで震えてくる…串の悲鳴が聞こえてきそうだ…はっ…いかんいかん。今日は「普通の(笑)臭豆腐屋さん」になりきるんじゃなかったのか?俺、ガマンだ。もう少しで揚げあがるから。 「ちゃらりらん♪上手に揚げましたー!!!」 どこかで、音楽が鳴った気がする。見事!としか形容できない俺のスーパー臭豆腐! 第一号の客がゆっくり饅頭でなければ…それなりに嬉しいんだが、まあ良いとしよう。 さあ、食うが良い。俺は、満を持して串を美鈴の前に掲げた。 「ゆゆ☆おいしそうねーーーーいただきまーーーーっゆゆゆ????☆」 「おっと待った!」 「こらあ!☆なにするのよおおおお☆ぷんっ」 「はは…?何言ってるんだ。まさか、お前はこれをタダで食べようとしているのか?屋台で食べるのには、当然…お金がいるだろう?まさか…持ってないんじゃないだろうな?!」 ゆっくり美鈴は、ゆっくり食べようと思ってぽかーーんと大口を開けている状態のまま、俺の言ったことを反芻している。さっきまでの威勢はどうした?糞饅頭?? 「…ゆゆ☆たべさせないと…このばっとでほーむらんにしてやるわ☆」 「ええ??!何だって?…紅魔館の門番は、そんなに貧乏なのか?……メイド長に俺が言ってやろうか?美鈴が買い食いしたくても、『紅魔館は貧乏だから無理☆』だとぼやいてた…って!」 「ゆゆゆうっゆうう…めいどちょう!!!☆それはこまるんだわ…☆」 へへへ…焦ってる焦ってる…。俺は内心ほくそえんでいた。さっきからお預けをくらって、美鈴の涎の量が半端ない!それに脅しが効いて、目を白黒させながら、俺の前で右往左往しているのが面白くて仕方ないからだ。よし、そろそろ譲歩してやるか…? 「しかたないなあ…ソレで良いよ。ソレで!」 「ゆゆゆ?☆」 俺は、美鈴の小汚いバットを指差して、交渉に入った。相当大事にしているものらしく、最初は嫌がっていた美鈴だが、串を近づけられると肉の腐ったようなつーーんという臭いに負けて、ついには俺にバットを差し出した。おお!俺のゆっくりコレクションボックスがまた一つ埋まったな。美鈴は半分涙目になりながら、3本の臭豆腐串を受け取った。すると…とたんに満面の笑みに変わる。 「ゆゆううう☆うーーまい☆ばくばくばくばくばく☆」 美鈴は一気に3本を口に入れてあっという間に飲み込んでしまった。う…げろげろげろおげろおおお…改めて食ってる所を見ると吐き気が催す。俺は、ゆっくり饅頭が大嫌いだ。こいつらに嫌がらせをする意味で、この屋台をはじめたわけなんだが、コレほどまでに喜ばれるとは思わなかった。ある意味「こんな生ゴミのような臭いの食事は胃が受け付けない」…とか言ってくれるゆっくりの方が、食わせ甲斐があるのになあ…などと少し残念に思う。…しかし、まあ、いくら好きでも、そろそろ気づくかな? 「……おい…おまえ☆しゅーっ・どーっ・ふ!…のあじがおかしいわよ……??」 期待通りの美鈴の反応に、俺は平静を装って答えた。 「…え?そうかい…???」 「ゆゆゆう…あまくて……からくて…ふしぎなかんじ…?☆」 「でも、美味しいだろ?俺の自家製ブレンドなんだ!色々入ってるからそう感じるんじゃないかな?!」 「ゆゆうっ…☆したがやけるみたいにいいいい…あついぃのおおおおおおうぅ☆」 「ははは。何だろう?唐辛子とアンモニアかなあ??」 「へえんなのううううぅ…いぎゃああぅ…へへへへぇ…がらいがらいいいいぃ…いいつもたべてるのは…こんなああんじゃなああいいいいいいいいがらいいいい☆」 ゆっくり美鈴は涙を滝のように零しながら、地面を転げまわっている。そうか〜そんなに旨かったか?涙を流して喜んでくれるなんて嬉しいなあ。すると、美鈴の口から未消化の臭豆腐が甘い胃液とともに吐き出された。まだ固形の物も混ざっている。表面の油皮が剥げて、内面がむき出しになっているものもある。意地汚いゆっくり美鈴は吐き出したものをまた口に入れなおそうとして吐しゃ物を覗き込んで声を詰まらせた。 「ぎゅううううううううあああああああぁ☆おおおおおぜううううううさぁまあああああああぁぁぁ?????☆」 そこには、あの首だけの饅頭に羽が生えた醜悪な生き物ゆっくりれみりあ(頭)とゆっくりぱちゅりーの細切れの残骸が広がっていた。ぐちゃぐちゃになってるが、辛うじて肉まんとクリームと髪の毛やリボンと一緒に顔の皮膚が繋がって見えている。俺の考案した臭豆腐の隠し味が効いてるね。大変だったんだぜ?1週間の間にゆっくりれみりあ(頭)と引きこもりゆちゅりーを捕まえて、ミキサーにかけて潰した豆腐と一緒に固形になるまで蒸し上げるのは。 しかし、美鈴は他のゆっくりと違って偉いなあ。一応、主人の見分けはつくらしいしな。これがゆっくり霊夢や魔理沙なら、無視して食いまくるのがオチだもんな。 「ゆゆゆゆぎゅ☆うぎゅう☆…おみずちょーだいびょおううぅ☆」 こんどはお水が欲しいってか。 「ほい、お水」 俺は、近くにあった水を差し出した。 「ゆゆゆゆ”…うべえええええ…ごぼごぼおおおおお!!ゆっく”うぅりでぎなああああいじゃないいいいい☆」 美鈴は俺の渡した水を盛大に吐き出した…!黒い噴水が空に吹き上がる。 ん…?俺特性ブレンド水が何か??? 水を飲みたいって言ったから、せっかくサービスしてやったのに吐き出すとは失礼なゆっくりめ!!!ちょっと黒いかもしれないけど、本場のレシピどおり、貝の腐汁、唐辛子や屑野菜の腐汁、ウジの湧いた肉の腐汁、黒石灰粉、それと臭みが足りなければ、肥溜めの中の物を少々…いや沢山混ぜる…どっからどうみても正にパーーーーフェクトゥ!!!!な臭豆腐汁。※良い子の鬼意山諸君は真似しないように。 完成度の高い証拠に、ゆっくり美鈴は汁を吐いたまま…悶絶して白目を剥き、息も絶え絶え…口の周りにハエが沢山寄ってきている有様だ。旨さのあまり気絶とは…可愛いやつめ。このまま、こいつは怒り狂ったメイド長に処分してもらうとして…さて、他のゆっくりにも味あわせてやるとするか。 **************************** 次の日。俺は屋台ではなく首から紐をかけて、お腹の辺りに箱を固定した簡易売り子の格好で、目をつけていたゆっくりの沢山いる集落に入ってみた。 ぷおーーーーーー…ゆっくり臭豆腐を食べていってね〜!!! 昨日のとおり、掛け声をかける。今日は、昨日と違って寄ってくるかな?…お!あそこに見えるのは、ゆっくりれいむ一家だな!雑草と花が生い茂る原っぱのあたりに野良ゆっくりの家族がゆっくり食事に来ていたのだ。 「やあ!こんにちは!ゆっくり臭豆腐を食べていってね〜!!!」 「「「ゆゆゆ!ゆっくりしていって…ゆゆゆ?なんか…すこしくさい?」」」 「臭くなんかないよ」 このゆっくりれいむの一家は、昨日の美鈴よりも小ぶりのお母さんれいむと、野球ボール大の子れいむ3匹、子まりさ2匹、プチトマト大の赤れいむ2匹、赤まりさ1匹の計9匹だった。 「ゆゆっ…おにいさんはすごくくさいから…ゆっくりできないひとだね…」 「ほんとうだね」 「ゆうぅ…ほんちょーだあぁ…くしゃいよ…」 「おお…くさいくさい…」 「くさいおにいさんは…まりさがおっぱらってやるよ!」 これだけ集中的に「臭い臭い」いわれていると、予想以上にムカつくなこの糞饅頭どもめ!!…いや、俺が臭いわけじゃない。この豆腐が悪い……うん…饅頭憎んで豆腐憎まず…おっと…本音がでちまった。 「まあまあ、待ってくれよ?君たち。お腹は減っていないかい?」 「ゆゆ!?なに?れいむたちになにかくれるのぉ?」 「ゆーーー?おなかはすいてるけど…」 「おにいさん…たべものちょーだい」 「おにゃかすいちゃったよー」 「ゆっ!まちなさい。おちびちゃんたち…!!おかーさんがどくみしてからだよー?おにいさん、れいむにまずたべものをちょうだいね?ゆっくりしないではやくしてね?!」 いやしさでは他のどのゆっくりにも負けていない、ゆっくり母れいむが名乗りを上げた。これは好都合!とばかりに、俺は箱から揚げたての臭豆腐串を取り出した。 「そうだね。れいむが味見をしたほうがいいね。とっても美味しいから、ゆっくり沢山食べていってね?」 「ゆっくりたべるよーーむーーーしゃむしゃ…ゆゆゆゆ!!」 「「「ゆゆゆ????おかーしゃん?」」」 赤ゆっくりが心配そうに母れいむに駆け寄っていくと、母れいむはすごくすっきりした顔で、「うまうまー!」とか叫んでいる。 「ゆ!?おいちいの?おかーちゃん」 「ゆゆ!れいむもたべりゅう〜!」 「ゆ−!にゃにこれ??くりょくてへんにゃの!」 「はふはふはふ…!おいちいねーおねえちゃんもたべにゃよー」 黒い串に刺さった臭豆腐は見る間に無くなっていく。赤れいむたちが食べているのを見て、子れいむと子まりさも俺に豆腐をねだりだした。俺は箱にある串を何本か地面に置いてやり、れいむ一家が食い漁る様を見てニヤリと笑った。 「おい、しゅーっ・どーっ・ふ!は旨かったか?」 「ゆゆぅ!おいしかったよーおにーさん!」 「うまうまーー!しゅーっ・どーっ・ふ!ってゆーの?」 「ちょっとくさいけどーおいしかったよ」 「おにいさんーー!もっとちょーだいーー」 「そうだよーひとりじめはよくにゃいよーー?」 俺のかけた声に口々に言葉を返すゆっくり饅頭。 「じゃあ、ゆっくりできたんだね?」 「ゆゆゆ!ゆっくりできたよー」 「ゆっくりできてーしあわせーーー!」 「おにゃかいっぱい…ゆぅっ…おにいさんもゆっくりしていってね」 「ゆっ…ゆっきゅりしていってにぇー」 れいむ一家は満面の笑顔で、ゆっくりぷれいすを満喫しているようだった。 「うん。そうするよ。………………………そういえば………君たちのお父さんが見当たらないけど……何処にいったの?………狩りにでも行ったのかい?」 「「「「「ゆっ!!」」」」」 そう、このれいむ一家は明らかにまりさがつがいでいる家族構成なのだ。子供にまりさ種がいる以上、当然親はまりさでなくてはいけない。子供たちの顔が明らかに暗くなっていく。そんな子供を見回して、母れいむが心配そうにつぶやいた。 「ゆっ…まりさが1しゅうかんまえからかえってないの…おにいさん…」 「おかーさんといっしょにみんなでさがしたのにみつからないんだよーー!」 「どこいっちゃったんだろーー?おとーちゃん…」 「そーーか…居なくなっちゃったのかーー。それは残念だね。この臭豆腐、食べさせてあげたかったのに………もし帰ってきたらこれをまりさにあげると良いよ…」 俺は最後の1串を母れいむの前に置いて、れいむ一家に別れを告げてその場を後にした。母れいむ達は、父まりさのためにその1串を食べないで残しておこうと決め、巣穴に持ち帰った。しかし数日後、母れいむが餌取りで居ないときに子供達はすっかりお腹を減らし、臭豆腐を食べてしまおうと画策したのだった。 「ゆっ!…すこしならつまみぐいしてもへいきだよね?」 「おとーちゃんがかえってこにゃいのがわりゅいんだよー!」 「「「ゆゆゆゆ!いただきまーーーちゅ」」」 おもむろに、子供達は臭豆腐にいっせいに喰らい付いた。 「むちゃむちゃむちゃ…ぐげえええええええええええ!!!!」 「ゆゆゆゆ”う”う”う”ぎゅ”ゆゆ”びゅうううう”っぐりでぎゅにゃあいいいい”ぃ!」 「げろおおおおおおおおおぎゅううう”ぅ!」 口から腐液を撒き散らし、ショックでのたうち回る子れいむと子まりさ達。対照的にすっかり動かなくなっている、赤れいむと赤まりさ…。 「だいじょうぶ?あかちゃんたち”いいいい???」 「ちゃんとはきだすんだずえ?…げぼっぼうう」 「ゆ……!しんでりゅうううう!!あかちゃんがああ!しんでりゅよ?!まりざああああ!!!?」 赤れいむと赤まりさたちはショック死してしまったようだ。何にそんなに驚いたのかって…?小さいから顔を近づけて見すぎたんだな?きっと…。 表面の油皮を割ると、腐臭と共に中からドロリと腐った餡子汁まみれになって灰茶色の血走った目玉が出てきた。よく見ると、他にも腐餡子に混じり金色の髪の毛もちらほらと。 「ゆぎゅううう!!!ゆゆめだまあああああああ!!!」 「おおおおとおととお”!!ざんっ!のがみのげえええええ!!」 「おがーーーーーじゃんんは”やぐうううがえってきでえええええええ!!!!」 早く食わないから、美味しい時期を逃してしまうんだよ?臭豆腐なんて旨いと思ってる奴の気が知れないなあ…と、俺は漠然と考えながら、さっき捕まえた母れいむをどんな臭豆腐にしようかとミキサーにかけるのであった。 おしまい。書き人三 ※SS書きなれてないので読みづらくてすみません。 このSSに感想を付ける
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前編 「ゆ~……ゆ~…………ゆっ?」 ある朝、ゆっくり魔理沙が目を覚ますと、見知らぬ場所に居た。いつもの家ではない。 白い壁に覆われて、真ん中に一本の柱が立っているだけの無味乾燥な部屋だ。 不安になって周囲を見ると、おにいさんが座っていた。そして、近寄っていつもの言葉を言う。 「いぬみたいにいうこときくから、ゆっくりさせてね!」 この一言から、ゆっくり魔理沙の一日は始まる。しかし、いつもなら来るはずのおにいさんの返事がなかった。 「ゆっ? おにいさん、どうしたの? だいじょうぶ!?」 もう一度呼びかけてから、身体を揺すると、ようやくおにいさんは反応を示した。 「……魔理沙か」 「まりさだよ! ゆっくりいうこときくね!」 こう言うと、直ぐに何々をしろ、と言われるはずなのに、またしても様子がおかしいままだった。 「魔理沙、俺はもう、駄目だ……」 「ゆゆ!?」 見ると、おにいさんの身体からは赤い水のようなものが流れている。 「どうしたの、なにかでてるよ!?」 「これは、お前たちでいうところの餡子だ」 「ゆぅぅ!? あんこがでちゃだめだよ! はやくもどして!」 諦めたように笑うおにいさん。 「俺は、もう駄目だ。血……いや餡子が多く出すぎた。もう長くない」 神妙な面持ちで話を聞くゆっくり魔理沙。 「だから……あそこを見ろ」 「ゆっ?」 おにいさんが指差したほうを見ると、二つの扉が開け放たれている。 「左に行くと、俺を助けられる人がいる。右に行くと……外に出られる」 「ゆ、おそと……!」 そと、それは甘美な響きであった。良いゆっくりになろうとしたのも、ひとえに外に出たいがためだった。 「魔理沙、お前が選べ。俺を助けるか、外に出るか。どうやったら、良いゆっくりになれるのか」 「でも、くびわが……」 身体にくいこんだままの『首輪』を気にする。これがある限り、いつ死んでもおかしくないのだ。 「大丈夫だ。どっちを選んでも『首輪』は簡単に外れる」 「れ、れいむは? れいむはどこにいったの?」 「それは分からない。どこかに連れて行かれたのかもしれないし、助けを呼びに行ってるのかもしれない」 「ゆゆゆ……」 ゆっくり魔理沙は悩んだ。今まで一緒だったれいむのことも気になったし、おにいさんが死んでしまいそうなことも気になった。 どうすればいいのか分からない。おにいさんに聞いてみても「お前が選べ」としか言わない。 そこで、ゆっくり魔理沙は閃いた。もう、おにいさんは死んでしまう寸前なのだ、と。だから「命令」も出せないのだ。 だったら、助けを呼んでもその間に死んでしまうだろう。それよりも早くれいむを見つけてあげたい。 もしかしたら泣いているかもしれないし、死んでしまっているかもしれないのだ。 やがて、ゆっくり魔理沙は決めた。もう『首輪』は大丈夫であり、おにいさんは駄目だ。なられいむを探しに行こうと。 「おにいさん、ごめ~んね! まりさは、れいむをさがしにいくよ! ゆっくりしんでいってね!」 おにいさんに最後の言葉を投げつけて、思い切り走り出す。 ゆっくり魔理沙は思う。まずはれいむを探すのだ。れいむを見つけて、その後はゆっくりできるおうちも探す。 食べ物もいっぱい集めて、ふたりの子供もたくさん欲しい。たくさん、たくさんゆっくりするのだ。 高鳴る思いのまま、右側の扉へ向かって駆ける。扉からは緑色が見えてくる。そして、外の景色が――― がちゃん!! 白い壁が続く通路にゆっくり魔理沙はぐちゃり、という汚らしい音を立てて叩きつけられた。 『首輪』も遅れて通路に落ちていった。 「ふぅ……今回は一匹だけか」 座った状態から立ち上がり、軽く背伸びをする。座っているのもそれなりに疲れるのだ。 歩いてゆっくり魔理沙の所へと向かう。『首輪』に引っ張られたことで中身が飛び散っている。 「おい、生きてるか」 「ゆ、っぐりぃ! どぼじでぇ!どぼじでぇぇえぇ!」 生きているようだ。ずいぶんとしぶとい。後頭部の辺りから餡子を撒き散らしていてもまだ喋れるらしい。 「何が、どうしたんだ」 「お゛ぞどぉ゛! ぐびわ゛ぁ゛!」 涙なのか、苦痛なのか分からない叫び声をあげている。 疑問に一つ一つ答えてやることにやろう。どうせ、死ぬ身だ。閻魔様への土産は必要だろうから。 「右の扉は外に続いているが、本当の出口はもっと奥だ。ここはガラスがあるから、外の景色が見えているだけだ」 「ゆっ、ゆっ、ゆっ、ゆぅ!」 ショックのためか、餡子を出しすぎているためか、ゆっくり魔理沙は痙攣し始めている。まずいな、早く説明してやらねば。 「左の扉に行けば、俺が操作して『首輪』を外した。だが、お前は右に行ったから『首輪』を外さなかった」 「ゆっ……」 「お前が本当に『良い』ゆっくりがどうかを試したんだ。そして、お前は『良い』ゆっくりにはなれなかった」 俺を助けに行っていればこんなことにはならなかったのにな、と付け加える。 その時、ゆっくり魔理沙の頭の中はぐるぐると渦巻いていた。 どうして、どうして、こんな風になったのか。れいむはどこにいったのか。 自分はどんな風になっているのか。いたいいたいいたいしんでしまう。 だれかたすけてれいむたすけておにいさんたすけて。 良いゆっくりになるから良いゆっくりでいさせてゆっくりさせて。 なりたくないあれにはなりたくないあれになったら死んでしまう。 いやだいやだいやだいやだくびわやだあれになるのはいや。 「魔理沙、お前は『悪い』ゆっくりになったんだよ。だから―――ゆっくり死ね」 「い゛や゛ゃ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!」 わるいゆっくりには、なりたくなかった。 俺は血糊を吹いて、部屋から出た。 「おつかれっす」 「どうも。今回は一匹だけですいません」 加工場の馴染みの職員と挨拶を交わす。 「いや、今回のヤツはアクが強いってんで、一匹も無理じゃないかって皆で賭けてたんっすよ」 「ほほう、それで?」 「オレの一人勝ちっす! ま、賭けてた商品がゆっくりなんで、あんまありがたくないっすけど」 「それは確かにありがたくないですね。おっと、少し失礼」 職員との話を切って、ゆっくり霊夢の所に向かう。最後までちゃんと調教しなくてはいけない。 ゆっくり霊夢は部屋で起きていたことを全て見ていた。今も友人の死体を見て呆然としている。 魔理沙側からは見えないが、霊夢側からは見えるという、マジックミラーというものだ。 「良かったな霊夢。これでようやく『良い』ゆっくりになれるぞ」 「な゛ん゛でぇ゛」 嬉しくないのだろうか、あれだけなりたがっていたのに。まあ、無理もないが。 「どう゛じでぇ゛! ま゛り゛ざじん゛ぢゃ゛っだよ゛ぉ゛ぉ゛ぉぉっ!」 「魔理沙は最後の最後で『良い』ゆっくりになれなかった。だから、餡子をぶちまけて、死んだ」 ゆっくりにも分かるように、噛んで含めるように言う。これはこれで最後となるだろう。 「どぼじでぇ!? ま゛り゛ざば」 「人間の言うことを聞かない『悪い』ゆっくりになった。俺を助けなかったというのは、そういうことだ」 あれこそが最終試験。調教要件は「如何なる場合でも言うこときくゆっくり」であったからだ。 ゆっくり霊夢は『悪いゆっくり』という単語に身を震わせる。ほとんど条件反射のようなものだ。 「霊夢、お前は犬のように人間の言うことをきく『良い』ゆっくりだ。言うことを聞いていれば」 ゆっくり魔理沙の残骸を見せつける。 「あんな風には、ならない」 「れ゛い゛む゛は゛い゛い゛ゆ゛っぐり゛でず! な゛ん゛でも゛、い゛ぬ゛み゛だい゛に゛い゛う゛ごどぎぎま゛ずぅ!」 これにて、調教完了である。俺の仕事もようやく終わった。 職員にゆっくり霊夢を引き渡し、いくつかの諸注意を与える。 言うことを聞かせたら、たまに食事を与えること。 「犬みたいに」という言葉を使えば、大概のことはする。 そして、 「時々、あれをいじっておいてください。大丈夫だと思いますが、念のため」 「はあ……しかし、あんな棒切れで本当に大丈夫なんすか?」 ゆっくり霊夢は『首輪』が既に外されており、代わりに『首輪』で空いた穴へ棒が突っ込んであった。 「体内に異物が入ってる限りは言うことをきかねばならない、という条件付けしてあるので、大丈夫ですよ」 異物といっても、そこそこ大きさがあればなんでも良い。ゆっくり霊夢が錯覚さえすればそれでいいのだ。 一応、他のゆっくりに不審がられないようにあまり長くないものを差し込んである。表面から少し出てる程度の長さだ。 職員の手に持たれたまま、ゆっくり霊夢はまだ泣いている。 「じゃあな。加工所で『良い』ゆっくりとして頑張っていけ」 「な゛ん゛で、ごんなどごにお゛い゛でぐの゛ぉ!?」 加工所は危ない、『悪い』ゆっくりは加工所で殺される、と徹底的に調教したためか、加工所にはいたくないらしい。 「なんか、泣いてますけど?」 「調教し終わったゆっくりが何を言おうが知ったことではないですよ」 無視して、歩いていく。報酬は後で請求しておかなければいけない。 「ごごい゛や゛ぁあ゛あ゛ぁぁ! い゛ぬ゛みだいに、い゛う゛ごど、ぎぎま゛ずからぁ! づれ゛でっでぐだざいぃぃぃぃっ!!」 ……いい加減、うっとおしい。今度こそ本当に最後の言葉を伝えてやらねばなるまい。 「黙っとけ。俺は犬よりも猫の方が好きなんだ」 俺の言葉で「ゆ゛っ!」と一度鳴いた後、黙り込むゆっくり霊夢。 調教したゆっくりが実験や牧羊犬、または繁殖用に使われようが、どうでもよかった。 背中にゆっくりの恨みがましい視線を浴びながら、帰りの途につく。 いつか猫でも飼ってみるか、などと俺は益体もないことをなんとなく考えていたのであった。 どうでもいい後書き 前編と後編に分けてみたけれど、分量が違ってしまったのが残念。もう少し均等にしたかった。 調教っぷりが足りてないなぁ、と切に感じるね。 あんな風に書いるけど、犬は嫌いじゃないよ。猫も嫌いじゃないけど。 あと、ゆっくりも好き。むしろ好きでなければこんな話書けるわけがない。 好きだから、つい殺っちゃうんだ♪ ってな具合。 「首輪」なる代物を出してみたけれど、こんなの誰でも考えつきそうなので勝手に使って構いません。 爆弾型の首輪を使ったSSがあったら、むしろ見てみたい。誰か書いて。 「~こわい」でシリーズ化してみようかとも思ったけど、書き続けられる自信がないのでやらない。やれない。 眠いせいか、支離滅裂で脊髄反射的な後書きですいません。 このSSに感想を付ける
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ゆっくり夫婦の出産 永遠亭のほど近く、竹林の奥にそのゆっくり夫婦は住んでいた。 ゆっくりまりさと、ゆっくりれいむ。 二匹でどれだけの時を過ごしてきたのだろう。 その膨れ上がったその体は大人が両手を広げたよりもなお広い。 重量だけでも一般的なゆっくり三十匹分を優に超すのではないだろうか。 そんなゆっくりれいむとゆっくりまりさが巨体を横たえるのは、竹林の藪に隠されたとある洞。 かろうじて入れるだけのスペースに二匹みっちりと入り込んで、ひたすらにゆっくりと動かないでいた。 あまりにもゆっくりしすぎたのだろう。巣穴の外側に向けた皮にコケが付着して、二匹の住処は竹林に完全に沈み込んで見えた。二匹はなるべく動かない方がゆっくりできることも知っていた。長年、生き抜いてこれた要因のは、偶然とそれを生かすわずかな知恵。 そんな完璧に擬態する二匹を、その日因幡てゐが発見できたのは、竹林のことを知り尽くしていることよりも、天性の幸運とひたすら暇だった境遇ゆえだろう。 鈴仙と永琳が研究にこもって三日目、統率するものもいない永遠亭でてゐは暇をもてあまし、竹林を一匹で歩いていたところだった。 「でけー」 あきれたようなてゐの嘆息。 巣穴の出入り口をふさぐ巨体に、古い妖怪であるてゐですらあっけにとられていた。 巣穴からかすかにはみだした赤いリボンは、おそらくれいむ種のものだろう。体躯のでかさに合わせて腹巻サイズのリボン。この鮮やかな朱が、てゐをゆっくりたちの存在に気づかせた。 てゐはその巨体を前にどうしたものか一端途方に暮れて、その紅リボンをひっぱってみる。 「ゆっ!? だれなの、やめてね!」 びりりと地面を揺らすようなゆっくりれいむのくぐもった声。 「ここはまりさとれいむのおうちだよ! 子供が生まれるから放っておいてね!」 同じくこもった声が続く。言葉の内容で、この二体が夫婦であることも判明した。 と、同時に悪戯っぽく緩むてゐの唇。 最初は軽くからかって暇つぶしをするつもりだった。でも、この二匹を使った悪戯を思いついてしまった。思いついたからには艱難辛苦を乗り越えてでもやらねばなるまい。それが悪戯兎なのだから。 「ごめんね、驚かしちゃった?」 完璧な猫なで声。言葉遣いも純真な少女の口調そのもの。鈴仙などはその声を聞いただけで、裏に流れる何かを感じて悶え苦しむだろう。 とはいえ、人間がその声に目じりが下がってしまうのと同様、ゆっくりたちの警戒を少しだけ解くことになる。 巣穴の表面がぞぞぞと回転して、お人よしそうな瞳が外に向いた。黒髪、ぺたんとして存在がわからない鼻、何かもの言いたげな口。パーツこそ巨大だが、まぎれもなくゆっくりれいむだった。 「ゆっ! 人間さんじゃなくて兎さんだ! ゆっくりしていってね!」 「兎さん!? れいむ、まりさが食べるから捕まえてね! 兎さんはゆっくりしていってね!」 「ゆぐーっ! ゆっくりおざないでええええ! 赤ちゃん、つぶれるううううう!」 食欲にかられた奥のまりさに押されているのか、きゅうきゅうに張り出したれいむの顔。 針で一突きすれば破裂しそうと思うてゐだったが、てゐのしたい悪戯はそんなことではない。にこにことした笑顔でゆっくりに話しかけていた。 「食べられないと思うよ。私は妖怪兎さんだからね」 「ゆっ! 妖怪さん!」 その言葉を皮切りに、れいむの膨張が止まる。 妖怪。人間ですら恐れるその存在を、長生きしていたこの二匹は存分に知っていた。 今度は逆に奥へ引っ込もうとするゆっくりれいむ。 「ま゛り゛さ゛! 奥へ行ってええええ、食べられちゃうううう!!!」 「やべでえええ、まりさの中のあがぢゃんがつぶれるよおおおおお!!!」 もう、てゐが立っているだけで赤ちゃんの命は風前の灯といえる状況だったが、それではもったいない。 てゐは悪意をまったく感じさせない柔和な笑顔を浮かべて見せる。 「大丈夫だよ、私はゆっくりを邪魔しないから」 いいながら、れいむの頭をそっとなでる。 「ゆ?」 そのくすぐったい感触に、れいむは逃げるのをやめて振り向いた。 「うさぎさん、ゆっくりさせてくれるの?」 まりさの声も続く。 「ゆっくりさせてくれるのなら、さっさとでていってね! 二度とこないでね!」 れいむを盾に、きっちりと要求。 その様子が面白くて、くすくすと笑みをこぼすてゐ。 てゐは、このゆっくりたちをゆっくりさせないことにした そのための言葉を、思いつくままに投げかける。 「でも、私が見つけたぐらいだから、すぐに他の妖怪がみつけちゃいそうだね」 二匹のぷるんぷるんという蠢動が、凍りついたかのように停止した。 地面を伝うゆっくりたちの忙しないささやき。 うさぎさんのいうとおりだよ。見つかっちゃうのはいやだよ。別のところにいかないと。でも、どこに。 こそこそと巣穴の中で話し合うれいむとまりさ。てゐのウサミミには丸聞こえだった。 「このおうちで、ゆっぐりじだがっだのにいいい……」 挨拶のころの元気よさはどこへやら。弱りきった口調でゆっくりれいむがつぶやく。 れいむが家族とはぐれてこの巣にたどり着いた頃、この巣はもっと狭くて、それなのに一人ぼっちで寒々としていた。 それがまりさと出会いを経て暖かなおうちになって、体が大きくなるのに従って巣を少しずつ広げていった。 そのおうちに、子供のためのスペースを作りはじめたのはいつ頃だろう。出産と子育てというゆっくりにとって一番危険な時期を無事のりきるため、二匹はずっと子供を安全に育てられるまで自らが大きくなるのを待っていた。 万全の準備で子づくりに挑んだ二匹。何年も待ち望み、求めてやまなかったわが子を熱望していた。 それから、まずはまりさが妊娠する。出産のための餡子は十分にお互い溜め込んでいたため、あとはゆっくりと待つばかり。 ただ、ゆっくりれいむも子供を妊娠したかった。わが子を生み出すという夢のために何年も準備していたのはれいむとて同じこと。 寂しげなれいむの様子に、ついついまりさも同情した。 そんな経緯で、二匹揃って妊娠したれいむとまりさ。このまま、何事もなければ、まりさだけが出産するよりも二倍の幸福が待っている。そのはずだった。 「二人ともお腹に赤ちゃんがいるから、あんまり動けないのおおおおおおおおお!」 まりさの悲嘆に続く、れいむのひぐひぐという鬱陶しい泣き声。 一方、てゐは新たな事実を前に瞳を輝かせていた。 二匹とも妊娠している? 好奇心がざわめくてゐの瞳。 一般に、ゆっくりたちはタチとネコに分かれて妊娠させる役と妊娠する役を分担する。出産準備中に子供の餡子となる分の餌を集めるタチ役、じっとして子供の生えた茎が成長するのを待つネコ役という具合に。 だが、体の中でゆっくりを育てて出産する大きなゆっくりは、元から莫大な餡子を抱えている。役をわける必要がない以上、この二匹はお互いを妊娠させあったのだろう。二匹とも身重になって状況の変化に対応できないという予測はまったく思いつかないままに。 その場の勢いに任せて、本当に馬鹿だ。 そんな感想を抱きながら、てゐはそっと目を伏せる。 「可哀想だね……」 ありもしない地雷によってゆっくりの安寧を奪った張本人の台詞とは思えない。心からの同情に満ちたその表情も、見事だった。 真に迫った演技に、ゆっくりたちはたやすくすがり付く。 「うさぎさん、お願い、ゆっくりできるところを教えてええ!!!」 「んー、あるかなあ。あ、そうだ!」 頭に電球が浮かんでもおかしくないようなそぶりで、手を鳴らす。 自分の体より小柄な兎の少女に、ゆっくり二匹は命運を握られて、必死のまなざしでてゐを見つめていた。 「ねえ、あなたたちさえ良ければ、ゆっくり子供を生める場所を紹介してあげようか」 「おっ……お゛ね゛か゛い゛し゛ま゛す゛ううう!」 頭を擦り付けるようなゆっくり二匹の礼に、今日もいいことしたと晴れやかな笑顔のてゐだった。 「ここが、あなたたちの部屋ね」 てゐに案内され、ゆっくり二匹が通されたのは永遠亭の一角。広くはないが、品のいい調度品で統一された和室だった。 「ゆっ! すごい、ゆっくりできるね!」 れいむがぴょんぴょんと部屋に飛び込んでいく。 その巨体で飛ぶものだから、着地のたびに畳と底板がみしみしと悲鳴をあげている。 それでも、てゐの笑顔にほころびはない。 続けて、れいむの後ろを追っていこうとしているのは、先ほどはずっと穴倉の奥にいたゆっくりまりさ。 だが、縁側から後一歩で和室の中というところで、立ち止まり恐る恐るてゐに向き直る。 「うさぎさん、ここは人間さんのおうちじゃないの?」 ゆっくりを長生きさせていたもの。それは、お互いの領域をわきまえる知性を育めたことだった。 てゐはその賢さに、正直ささやかな驚きを感じてしまうものの、表情は微塵も揺るがぬ一面の笑顔。 「大丈夫だよ。ここは私のうちで、持ち主の私がこの部屋をあなたたちの部屋だと決めたのだから」 その笑顔と言葉に、まりさはほっと一息。 「すごい! やわらかくて暖かいよ! はやくきて、まりさ!」 先行するれいむの声にたまらず、閑静な日本家屋に飛び込んでいく。 大きな振動と、土ぼこり。 穴倉の中にいたまりさの体が、たたみに大きな泥のかたまりをのせ、巨体でずりりとこすり付ける。 向かう先にはゆっくりれいむ。その巨躯で体当たりした結果、大穴の開いた襖。その半壊した奥は押し入れのようだ。 その押入れからは、雪崩のように布団の一段がすべり落ちている。れいむは土まみれの体をこすりつける。幸せそうな「やわらかーい、ゆっくりできるよおお!」という歓声と共に。 楽しげなパートナーの様子に、まりさも辛抱できなかった。 「まりさもゆっくりするうう! ……っ! ひぐうっ!!」 駆け寄るまりさの巨躯では、足元が見えない。そのため、ちゃぶ台にもろに下あごをぶつけていた。 派手な音が響いてひっくりかえるゆっくりまりさとちゃぶ台。ちゃぶ台の上のガラス皿がごろごろと重い音を立て、皿にのせていた果物を床に転がす。 「……ゆっぐりいたぐなっでぎだああああ!」 ひんひんと滝のような涙を流すゆっくりまりさ。 「まりさっ! れいむの赤ちゃんは大丈夫!?」 「……っ! だ、だいじょうぶ、ゆっぐりじでいるよおお」 何がわかるのだろうか、てゐにはうかがい知れないが、子供を心配しあう二匹には十分な母性の強さを感じる。 子供の大切さがひしひしと伝わる光景。このまま出産しても、二匹は母としての勤めを果たすことが可能だろう。 「ゆっ!? 果物さんだ!」 先ほどの衝突で床にこぼれた果物。 その桃の甘い香りにまりさが不意に気づいていた。 いつのまにか、涙は止まっている。その代わりに、大きな口の端からだらららと、留処ないよだれ。 二体はずるずると這うような動作で五個の桃を集める。 まずは仲良く、二個づつ。 「むーしゃ、むーしゃ。しあわせー!」 ほほえましい二匹のやりとり。 ゆっくりが桃をかむたび、その果汁がだらだらと顎を伝い、畳と布団に染みをつくっていった。 あっという間に、部屋の本来の持ち主の好物ゆっくりのお腹に納まっていき、残すは一個。 もちろん、長年にわたって深く愛し合う二匹は奪い合ったりはしない。 まりさとれいむは桃をはさんで向かい合い、桃をお互いの口を押し付けあって持ち上げた。そのまま、双方から食べていく。 「むーしゃ、むーしゃ」 お互いが食べあうため、近づいていく唇。最後は二匹の唇がぺったりとくっついた。 「ゆううう、れいむのくちびる、あまーいよお♪」 「まりさのくちびるも、あまくてぎもぢいいいいー♪」 ぺろぺろと、お互いのごんぶとの舌が触れ合う。 ちゅちゅと響く不快な摩擦音。 「ぷはあああ! れいむのてくにっくがずごいいいいいいい!」 「ぢゅううう、んんんん……ぽん! ぷはああああ、まりざの力づよざもずでぎいいいいい!」 そのまま、本格的にお互いの唇を吸い合う二匹。 巨体同士が絡み合う度、湿り気を帯びた音がぐちゃぐちゃと音を立てる。 どうやら、安全な居場所を得たことで、もう一匹という気持ちが盛り上がりつつあるようだ。 興味深そうに見つめるてゐ。 だが、ゆっくりれいむに睨み返されてしまった。 性欲で血走った目を半眼にし、てゐをにらみつけている。 「ゆっ、なに見ているの! うさぎさんはここでゆっくりしないでね!」 「うさぎさん、ここはもうまりさとれいむのおうちなんだから、ゆっくり出ていってね!」 見られるのを気にするんだ。 その新たな発見に満足して、てゐは気を悪くしたふうもなく笑う。 「あ、ごめんね。ではごゆるりと……ゆっくりしていってね」 含み笑いをにじませながら、ゆっくりれいむにお別れを告げていた。 ゆっくりの巨体で骨組みが粉砕されていた障子を、静かに閉めて立ち去るてゐだった。 「ようやく、すっきりできるよ、れいむうううう」 「ま、まりさああああああ。誰よりもすっきりじだい! だいぢゅきいいいいい」 巨躯二体の絡みはすさまじかった。 ごろごろと体を擦り付けあって部屋を縦横に転がる。 その後を刻み付けるように、二体から分泌された粘液がたたみに跡を残していく。 子供の出る部分をぴちゃぴちゃとすりあせて、ますます興奮していくゆっくり。 「ゆゆゆゆゆゆゆゆっひいいいぎいいいいいいい!」 興奮のあまり、行き立ちはだかる箪笥を二匹、ぶちあたって押し倒す。 地鳴りを立てて倒れ付す衣装箪笥。反動で開いた引き出しから、清楚な白の下着類がたたみの上にあられもなく広がると。 「にゅふうううううううう!!」 二匹がその上に転がりこみ、べとべとの体液に張り付かせて全身をまだらに染める。 「見えないいいいい! げど、まりざがあだだがあああああああい!」 ブラジャーかぶったような体制で両目を塞がれたれいむが、暗闇の中でますます相手の体を求めていた。パンツごしにすううぱああと、荒い息を繰り返していたまりさもすかさず応じる。 情愛を確かめる頬のすり合わせ。お互いのよだれがダラダラとこぼれて、頬にすり込まれていく。顔は真っ赤にのぼせ上がって、だらしない半開きの口が閉まる気配も見せなかった。 すり合わせながら、ぽやああと虚空をうっとりと眺めていた目が、次第に上に上にと高みを見つめる。 口からは、ぶっとい舌がべろんとのびて、はああはああと熱いむわっとした息を相手に吹きかけていた。 絶頂は近い。 ぐりぐりとこすり付けていた体を、ぎゅぎゅぎゅぎゅと小刻みにしていくゆっくりまりさ。 「ずっ、ずっぎりずるううう!? ぞろぞろ、ずっぎりじだい、じだいよおおおおおお!」 まりさの顔はびくんびくんと、危険なほどの痙攣して欲望の果てを望んでいた。 が、そんなまりさのアヘ顔を、欲情した瞳で視姦するれいむ。 「ゆふふふふ! ぞんな゛にそわそわして、がわいいよおおおおまりざあああ! ダメなのおおおおお、もうイグのおおおおお? ガマンできないのおおおおおおお? もうずっぎりしちゃうのおおおお!? 」 答える声はない。 まりさは舌が千切れるのではというほど目につきだして、びくびくと弛緩する体をますます小刻みれいむにすり合わせていく。 「あ゛せ゛ら゛な゛い゛て゛ええええ、ゆっぐりじでねええええ! もっ、も゛お゛ち゛ょっと゛! うっとりじようよおおおおおおお、まりさああああ!」 成熟したゆっくりほど、すっきりの前段階、うっとりの心地よさに貪欲だった。 パートナーのもうたまらないと吹き上げる熱に、ぞくぞくと興奮に打ち震えるゆっくりれいむ。 「まりざあああ、言っでええええ! れいむ、すっきりざぜでくださいって、言っでえええええええ!」 「んほおおおおおおおおおおおおおお! すっきりっ、ずっぎりじだいんおおおおお、ざぜでえええええ、れいむううううううううう!」 涙とよだれと汗と謎の液体で、ぐっちゃぐっちゃの顔で哀願するまりさ。 その惨めたらしい、情けを乞うような卑屈さに、れいむの体を貫く興奮。もはやれいむにも押さえがきかなくなる。 「ああんんんうっほおおおおおおおおおおお!!! いぐううううううっ! らめええええええんほおおおおおおおおおお!!!」 「イげるううううううう、うひいいいいいいゆううううううううう! うれじいいいいいよおおおほほおおおおおおおおお!!!」 二匹は、今まさに絶頂へ至ろうとしていた。 「な、なんなの、これは!」 へたれたウサミミが怒りに震えていた。 妖怪兎であるが、すらりとした背丈と赤い瞳が特徴の月の兎、鈴仙だった。 鈴仙の身分は、実質的には月からの逃走して永遠亭に居座った肩身の狭い居候で、永遠亭の主や薬師に体よく使われる立場。 そんなわけで、この三日間は不老不死不眠不休の師匠に付き合わされ、片時も気を抜けない実験の手伝いをさせられていた。 もう、すでに身も心も疲労の極地。 てゐと約束していた一緒に人の里に遊びに行く約束も断って、今はひたすらに自室の布団が恋しかった。 だが、自室のかなり前衛的にアレンジされた障子を開き、目の前に広がっていた光景は鈴仙の精神に止めを刺すものだった。 狭いながらも、お気に入りの調度品で統一し、永遠亭でもっともほっとできるそのマイルームは、巨大な二匹の生き物に占拠されていた。 「じょ、状況確認」 何とか、昔の月の軍人時代の教練を思い出して部屋の様子を確認する鈴仙。 部屋は荒れ果てていた。 ちゃぶ台はひっくりかえり、香霖堂で粘って購入したガラス皿にはひびが入り、イグサが香り立つ新しい畳も泥だらけ。襖には大穴、障子は骨がへし折られ、箪笥は引き出されて自らの制服や下着は無造作に散乱し、耐え難いことに一部が生き物にはりついていた。もはや、生き物の醜悪さは筆舌に尽くしがたいものに成り果てている。 鈴仙があれほど望んでいた布団などはもう見る影もない。 興奮した様子で絡み合う二匹の下に、下着類とともにしかれて二匹の愛の営みの舞台と化していた。もちろん、布団にも得体の知れない粘液が方針円状に広がり、ぱちんぱちんと体を合わせるゆっくり二匹の動きに合わせてしぶきが部屋中に飛散している。 許されるならば火を放ちたい。 鈴仙がそんな感慨に身を震わせていると、部屋の中央で絡み合うゆっくり二匹が、ぶぶぶぶぶぶと地震の最中のように揺れ始める。 まさか! 悪寒に駆られた鈴仙が部屋に踏み込もうとするが、すでに遅かった。 「のほおおお、すっきりー!!!」 目の前で高みに達していた。 愛しのマイルームが、ゆっくりどものラブホテルと堕したその瞬間だった。 全身を伸び上がらせて天にも昇る感覚に酔いしれるゆっくり二匹。 伸びきったその体が、今度は力を失ってしゅうううと横にへたりと広がる。疲労感に包まれて、至福の脱力。 しばらく、ひいいふううゆううという甘く荒い二匹の息と、無言で立ち尽くす鈴仙がその場に残されていた。 とろんとした目で、まりさを見つめるれいむ。 「ゆー……二人目もきっと今できたね!」 「ゆっ! 今の子供を生んだら、もう一人がんばろうね!」 満ち足りた幸福の言葉をかけあう二匹。 と、そのうち片方、まりさの顔がびくんと震えた。 「ゆっ! 今、お腹の子がゆっくり動き出したよ!」 「ゆ? ゆゆっ!? れいむの子も動き出したよおおお!」 出産間際であれだけの運動をしたのだから、子供も何事かと動き出すのだろう。 二匹、慌てて身を起こし、並んで部屋の中央に。そのまま、微動だにしない。 「ゆっぐううううううう!」 ゆっくりのとぼけた顔がこれほどまで辛そうな表情をするとは、鈴仙は知らなかった。 もしかして、死ぬのだろうとか。淡い期待をよせる鈴仙。死ねばいいのに。死ね。 それに応えるかのように、ゆっくり二匹の顔が、揃って苦悶の色をますます濃くしていった。 と、同時にゆっくりの下あごに少しずつ、黒い影が生まれていく。 穴だった。 肌を内側から裂くように、顎の下に黒い穴が広がり始める。 「んほおおおおおお……!」 あえぐ二匹。快楽などではなく、途方もない苦痛にこぼれた声だった。 果たして、どれだけの痛みなのだろう。歯茎をむきだしにし、目から滂沱の涙。どれだけかみ締めているのか、唇からはぽろぽろと餡子が一筋ながれていた。穴の付近からは餡子とも違う液体が流れて、布団の染みを絶望的に広げていく。 わけもわからず、そのゆっくり二匹の競演に見入ってしまっていた鈴仙。 だが、その黒い穴の奥からゆっくりの子どもの顔がうっすらと見えてきて、すべてを悟った。 「ま、まちなさい!」 自分の部屋での出産だけはやめさせたかった。 そうしなければ、自分の部屋をもう家畜小屋としか思えなくなる。 ぎゅっとふんばる二匹は、突然の乱入者にも身動きできないし、いまさら中止などできない。 そもそも、一刻も早く終わらせたい苦痛なのだ。 この、自分の体を真っ二つに引き裂いたような痛みは、出産直前に最大となり、そうして終わることがわかっているから耐えられる苦痛。さっさと終わらせたいのに、このバニーさんは何を言っているのだろう。 「でていってよ!」 鈴仙がまったく動かない二匹に業を煮やしてれいむの体を押すが、その重量はびくともしない。 出産直前のれいむの苦痛を増幅させただけだった。 「ゆぎいいいいい! いだいいいいいじぬうううううう! はなじでよおおおほおっ!」 あまりの血走った形相に、思わず手を離す鈴仙。 ふひふひと荒い息で痛みを逃すゆっくりれいむが、その血眼を乱入者に向ける。 「兎のおねえさん、ひどいことしないでとっとと消えてね!」 修羅場中の母となろうとしているれいむは、母の情愛から好戦的になっていた。 「なっ! あんたねえ、私の部屋から消えるのはあなたたちでしょうが!」 ゆっくり相手だとわかっていながらも、思わずやり返す鈴仙。 だが、いきなり乱入しての私の部屋宣言に、その様子を横目で見ていたゆっくりまりさが激昂する番だった。 兎さんからもらったおうちなのに、このバカうさぎは何をわけのわからないことを言うのだろう。 人のうちに入って、自分の部屋だと主張することがいけないことぐらいわかってほしいゆっくりまりさ。 「ごちゃごちゃうるさいよ! ここはれいむとまりさのおうちだよ!! いまからこども産むんだから さっさとでてってね!!」 「兎さんからもらったおうちから、出ていってね!」 れいむとまりさの息のあった応酬に、鈴仙は思わず半笑い。 「あー、その兎さんって誰?」 なんとなく、鈴仙は事情が読めてきていた。 「名前はわからないけど、おねえさんより小さくて、品がよくて、やさしくて、じゅんしんな兎さんだよ!」 「うん、そしてれいむみたいな綺麗な黒髪の兎さんだよ!」 「ああ、てゐ、ね」 悪戯兎のニヒヒという品が無く、邪気に満ちて、腹黒な笑顔を頭に思い浮かべる鈴仙。 それにしても、ここまで洒落にならない悪戯をされたのは久しぶりだった。 ふつふつと部屋の惨状を見るたびに煮えたぎる鈴仙の胸のうち。 「それじゃあ、お姉さんはとっとと消えてね!」 「バカじゃないなら、わかるよね。れいむたちはもうすぐ子供が生まれそうなの! 消えてね!」 本来、穏やかな気性の鈴仙。それなのに、その怒りの炎が消えぬよう丹念に油を注ぐ妊娠ゆっくりたち。 鈴仙は腹を決めた。 幸い、鈴仙の手には師匠の永琳から廃棄を頼まれた資材が一山。 その中に、チューブのように太いゴムを見つけ出していた。ゆっくりたちの体を三周して、いまだあまりあるほどのゴムの束。 すううと、鈴仙の狂気の瞳が細められる。 目の前には、間断なく襲い掛かる出産の苦痛に顔を歪めながら、それでも苛々と鈴仙をにらみつける二匹の巨大なゆっくり。 「れいむううう、このお姉さん邪魔なのにどうしているのおおお?」 「きっと、バカなんだね! バカなのは仕方ないから、ゆっくりもう一度いうよ!」 「うん、れいむはやっぱり親切だね! それじゃあ、いうよ! ゆーっくーりー、きーえーてー!」 「わーかーるーよーねー?」 鈴仙はゆっくりたちの心底見下した視線を受け止めて、深く頷く。 「そう、わかったわ」 師匠にこき使われて、てゐに悪戯されて、ゆっくりに出て行けといわれるこの現状の憤りを、鈴仙はしっかりと理解していた。 「ゆっ! ゆっくり話したかいがあったよ!」 「それじゃあ、ゆっくり子供を産もうね! 幸せな家族、つくろうね!」 「うん! 幸せになろうねー!」 向かい合って、安堵の表情を交し合うゆっくり二匹。 瞬間、鈴仙は動いた。 俊敏にゆっくりまりさの後ろに回りこむと、全身の力をこめて体当たりする。 その衝撃にびくんと前に飛び出したまりさ。 正面にいたのは、ゆっくりれいむだった。 「むぎゅ!」 唇をべったり密着させるゆっくり。 何が起こったのか、困惑して離れようとする。 だが、できなかった。 鈴仙の狂気の視線を受けたれいむが、平衡感覚をなくし、離れようとして逆にますますまりさに密着してしまうからだ。 「ゆっ!? ゆっくり離れてね、れいむ!」 「まりさこそ、れいむの正面にこないでゆっくりしていてよ!」 文句をつけあう二匹。正しいのはまりさだが、鈴仙は親切に教えてあげたりはしない。ただ無言で、ゴムチューブを伸ばしてゆっくりたちを縛り上げていくだけだ。 やがて、鈴仙の手で十字に固くゴムが結ばれ、中心に向けてしめあげられるゆっくりたち。 向かい合って、唇を強制的に合わせたまま固定されていた。 「ゆゆゆゆゆ!?」 「ぐっ、ぐるじいいいいいい!」 かろうじて唇をはずしての苦悶は、重圧からにごりきったダミ声となっていた。 元の、気に障るほどに明るい声の面影は、もうどこにも見受けられない。 「ああああああ、あが……あがちゃ……」 赤ちゃんが死んじゃう。れいむたちはどうなっていもいいから、赤ちゃんだけは産ませてください。 そんなゆっくり夫婦の嘆願も、もう締め上げるゴムのきつさに言葉にならなかった。 鈴仙はとりあえず拘束できたことに満足する。しばらく、このままで反省されたいと、ただそれだけの行動。 だが、赤ちゃんが詰まってぱんぱんの親ゆっくりの体にはすさまじい拷問だった。めりめりと悲鳴をあげる赤ちゃん。一週間、穴倉の中でゆっくり大切に育て、新しい家族の誕生に思いをはせたあの日々が、すべて団子の出来損ないで終わってしまう。 「もうこんな目に会いたくないなら、早くここから出て行くことね」 鈴仙はゆっくりを殺すという選択肢をとらなかった。後始末が大変だろうし、命を弄ぶのは本意ではない。 それに、鈴仙には復讐を誓うべき対象は別にいる。 「まあ、あなたたちはてゐに騙された被害者でもあるのよね」 友人の兎の顔を思い浮かべ、ため息。 怒るのも挑発にのってしまっているようでもどかしい鈴仙だった。 「これから、ここの片づけをする道具をもってくるから、それまでに転がるなりして永遠亭から消え失せれていれば何もしないわ」 淡々と言い残して背中を向ける鈴仙。 が、部屋を去る前にもう一度振り返る。 「でも、今度から永遠亭の半径100m以内で見かけたら、殺すから」 赤い目が、本気の意思を潜ませて冷ややかに輝いていた。 部屋を後にした鈴仙は、すぐに身を翻して離れの方へ。 駆け出して鈴仙の前に、その波長に捕らえられたてゐの姿があらわれて、驚いたようにこちらを振り向く。 「こらっ! てゐ!」 しかりつけると観念したかのように立ち止まっていた。 けど、反省の色はない。憎たらしく、べーと舌を出す真似。 まるで子供みたいと鈴仙は思った。 本来のてゐは妖怪兎のリーダーで、寿命もそこらの妖怪がはだしで逃げ出すほどの長寿。永琳たちがくるまでは永遠亭を指導し、永琳たちの来訪時には交渉をもって妖怪兎たちの種の安寧を確保した実績を持つ、老練した妖怪だ。 人間たちにしかける悪戯も機知にとんでいて、騙されたことすら気づかないような嘘を思いつける知恵者でもある。 それがなぜ、自分にはこんな子供じみた悪戯ばかりするのか。 鈴仙はわかっていた。 だから、まったくもって本気で怒れない鈴仙。 苦笑交じりの笑みで、てゐに語りかける。 「てゐ、悪かったわね。最近、ずっとかまってあげられなかった」 永琳の助手以外にも何かと忙しくて、一月あまりろくな会話をしてこなかった気がする。 「なっ、なにを言っているの!」 激昂するてゐに向けられる鈴仙の赤い瞳は優しげだった。 そのまま、一呼吸で歩み寄りぎゅうと抱きしめてあげると、てゐの達者なはずの口が言葉を失う。 そのぬくもりに、どうしようもなくてゐの心が満たされてしまう。 「今日からしばらくは暇だから、いっしょにいようね」 「……うー」 用意していた拒絶の言葉もどこへやら。 芸も無く頷くてゐに、満足げな笑顔をもらす。 「じゃあ、今日からてゐの部屋で私も休むわね」 「え、どうしてー!」 「あなたが、めちゃくちゃにしちゃったでしょ、私の部屋。どこで休めばいいのよ」 「う、確かに。し、しかたないなー!」 なかなかに微笑ましい姉妹のような妖怪兎たち。 これから、夜通し積もる話でもするのだろう。 だが、その前にてゐは悪戯に使った道具のことを思い出す。 「あ、そうだ。あのでっかいゆっくりたちはどうしたの?」 「今は動けないようにしているけど、解いて逃がしてあげるわよ。あれだけ脅しておけば、もうこないでしょうし」 やっぱり鈴仙は甘いなあとてゐはつくづく感じる。 そこが、てゐが一番気に入っているところなんだけどねと、ほくそ笑むてゐに、また何かたくらんでいるのかと困り顔の鈴仙。 一路、自分の部屋へ向かう二羽の妖怪兎。 だが、たどり着いた自分の部屋はがらんどう。 ゆっくり夫婦の姿はすでに部屋から消えうせて、影も形もなくなっていた。 続きへ